[原子力産業新聞] 2000年12月7日 第2066号 <2面>

[食品照射] 放射線照射許可求め全日本スパイス協会が要請書

香辛料の汚染低減化で

全日本スパイス協会 (小林博司理事長) は4日、厚生大臣に対し、香辛料の微生物汚染低減化を目的とする放射線照射の許可を求める要請書を提出した。

香辛料の大部分は熱帯地方を中心に生産されているが、そうした地域の生産現場は微生物汚染防止対策が講じられていない所が多いため、土壌からの微生物に よる汚染や害虫の混入が避けられない。また、これら微生物の中には食中毒やカビ毒の原因となるものもあり、殺菌・殺虫処理を行う必要があるが、化学薬品は禁止されているほか、紫外線等による非加熱処理は効果が不十分とされている。

このため、我が国では香りや風味など商品価値を損なうことにつながっても、加熱殺菌方法が用いられているのが現状だ。

国際的には、こうした問題の解決策として、高品質で衛生状態のよい香辛料を供給するため、殺菌・殺虫効果に優れ品質の劣化が少ない非加熱殺菌法として、放射線殺菌法を32か国が許可し、現在すでに26か国が実用化している。

こうしたことを背景に、スパイス協会では、我が国における香辛料の品質保持や、消費者がより衛生的に高品質の香辛料を手に入れられるよう、放射線殺菌・殺虫法の法的許可を求めて、厚生省に要請を行った。具体的には、放射線照射の対象とすべき香辛料の種類を挙げるとともに、処理に使用する放射線の種類や吸収線量の制限、再照射の禁止などを定めるよう求めている。

我が国では、食品への放射線照射は唯一、1972年に発芽防止の目的でジャガイモヘの照射が認められた例がある。

今回のスパイスヘの照射許可申請はそれ以来の食品照射をめぐる動きで、関係者は期待している。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.
Copyright (C) 記事の無断転用を禁じます。