[原子力産業新聞] 2000年12月14日 第2067号 <1面>

[サイクル機構] もんじゅ改造へ−事前了解願いを提出

ナトリウム漏洩対策を実施

核燃料サイクル開発機構は8日、栗田幸雄福井県知事および河瀬一治敦賀市長に対して、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩対策に関する工事計画について、安全協定に基づく事前了解願いを提出した。1995年12月8日の漏洩事故発生からちょうど5年が経過した日の願い入れとなった。今後の焦点は、県・市議会での「もんじゅ」の安全性に関する議論を踏まえ、栗田知事らがいつの時点で工事計画を了承するかに移る。


サイクル機構の都甲泰正理事長は8日午前、福井県庁を訪ね、栗田知事宛の事前了解願いを西川一誠副知事に手渡した。同じく、河瀬市長のもとには竹内榮次同機構副理事長・敦賀本部長が訪れ、事前了解を願い入れた。その中でサイクル機構は、これまでに「もんじゅ」で発生した2次主冷却系ナトリウム漏洩事故の原因究明を行うとともに、事故を教訓に全体の設備・システムの安全総点検を実施、安全性や信頼性の向上に向けた改善策をまとめたとしたうえで、主要な施設の変更となる漏洩対策工事計画について事前の了解を提出する旨を説明。あわせて、工事計画には国の安全審査が必要である点に触れ、国に対する原子炉設置変更許可を申し出ることへの了承を求めた。

サイクル機構が実施を計画している漏洩対策工事は、(1) 2次冷却系温度計の交換・撤去工事 (2) ナトリウム漏洩に対する改善工事 (3) 蒸発器ブローダウン性能の改善工事−から成る。

(1) については、温度計の流力振動による破損を防止するために、温度計のさや管部分の長さを短くするとともに剛性を強くすることで振動の発生を回避し、応力が集中しない形のものと交換するとしている。

(2) の改善工事では、ナトリウムが漏洩した場合、早期に漏洩を終わらせ、漏洩による施設への影響を最少化するための対策を示した。漏洩を早く確実に検知できるようセルモニターの設置や、漏洩の停止のためナトリウム抜き取り配管を追加することや、ナトリウム燃焼や施設への影響を抑えるため、換気空調設備の早期自動停止や窒素ガス注入機能の追加などを行うこととし、中央制御室に総合漏洩監視システムを設置するなど。

(3) についても、蒸気発生器伝熱管から水が漏洩した場合には確実に検知が可能になるようカバーガス圧力計を追加設置し、水・蒸気の送り出し (ブローダウン) が早期に完了できるよう蒸発器放出弁を追加することを挙げている。

工事全体に要する期間は、およそ17か月の見込みだという。

「もんじゅ」では、5年前の12月8日午後7時47分頃、性能試験中に2次系ナトリウム漏洩事故が発生。その後の調査で、原因は温度計を収めたさや管の破損と特定。直後の一連の対応の不手際が社会問題となり、当時の動燃事業団の組織問題と指摘されるまでに至った。その後、動燃改革検討委員会での議論を経て、98年には新たに核燃料サイクル開発機構として再出発。組織内部の意識改革と情報公開の推進や、地元への理解促進活動に取り組んできた。その間、「もんじゅ」では安全総点検として、ナトリウム漏洩関連設備のほか、原子炉施設全体にわたる設計や運用の点検を実施してきた。

事前了解願いを受理した県側では、栗田知事が「もんじゅ」の安全性そのものを、工事の開始や運転再開とは切り離して議論したいとの態度を示している。栗田知事は今後、整備新幹線計画の推進を強く求める県会議員の動向をにらみながら、「もんじゅ」の安全性に関わる議論を進めざるをえない状況だ。県議会の会期は今月19日までとなっている。次回は来年2月に開会の予定で、事前了解願いの了承は数か月先になる可能性も高いと見られている。


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