[原子力産業新聞] 2000年12月14日 第2067号 <6面>

[NSネット] 福島第一の評価公表

緊急の改善項目はなし

ニュークリアセイフティーネットワーク (NSネット) はこのほど、初の原子力発電所を対象とした相互評価 (ピアレビュー) の結果を公表した。

ピアレビューは、同ネットの会員の専門家からなる「レビューチーム」が会員の事業所を相互に訪問し、原子力安全に関する会員間の共通課題について相互評価を実施して課題の摘出や良好事例の水平展開などをおこない、お互いに持っている知見を共有して原子力産業界全体の安全文化の向上をはかる、NS ネットの中心的制度。JCO 臨界事故を受け、核燃料施設における臨界や火災、爆発など重大事故の防止をはじめとする原子力安全への取組が適切になされているか否かにポイントを置き、実施される。

ピアレビューは、これまで燃料加工施設などを対象に5回行われてきた。今回原子力発電施設として初のレビュー対象となったのは、東京電力の福島第一原子力発電所。10月17〜20日の日程で、三菱重工業、電源開発、北海道電力、日本原子力研究所、三菱原子燃料および NS ネット事務局からなるレビューチームが「安全確保の基盤」、「地域社会との関係 (防災対策の充実)」、「運転経験の安全性向上への反映」、「JCO 事故教訓の反映・取り組み」、「軽水炉における最近の課題」に基本的な視点を置き、それぞれについて (1) 組織・運営 (2) 緊急時対策 (3) 教育・訓練 (4) 運転・保守 (5) 放射線防護 (6) 重要課題対応−の分野に展開した上でレビュー項目を決定し、実施された。

調査の結果、レビューチームは「直ちに改善措置を施さなければ重大事故に繋がるような項目は見いだせず」「発電所長をはじめ全従業員が一体となり、原子力安全確保を継続・強化していくために真剣に取り組んでいる実態が確認された」と結論付けるとともに、(1) 安全文化醸成活動の一環として協力企業との円滑なコミュニケーション確保に努力が払われている (2) 1985年頃から3回にわたり実施された作業員の「線量低減タスク」などによる定検工法の改善などにより被曝低減が図られているほか、3、2、5号機で順次実施しているシュラウド交換においても、積極的な被曝低減対策が実施され、成果を上げている (3) 他の原子力発電所などにおいて発生し、収集されたトラブル事故などの事例はタイムリーな検討が行われるとともに、特に緊急性を要すると判断された場合には、速やかな関係箇所への周知および迅速なコメント処理が行われる制度が整っているなど水平展開・再発防止措置が確実に図られている --- などを良好事例として挙げている。

一方、操業の安全性をさらに向上させるための提案として「見学者を案内する経路で使用済み燃料プール側へ不用意に接近できないようにすること」、「協力企業に対する一層の安全文化の浸透を働きかけること」、「全従業員対象に実施している臨界安全教育を、今後定期的に実施していくようなシステムを確立すること」などを行った。


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