[原子力産業新聞] 2000年12月21日 第2068号 <3面>

[ウクライナ] チェルノブイリを永久閉鎖

残った3号機、手動停止

1986年4月26日に世界の原子力開発利用史上、最悪の事故を引き起こしたウクライナのチェルノブイリ原子力発電所が15日に永久閉鎖された。現地時間の午後、同国のL.クチマ大統領は首都キエフの中央式典ホールからビデオ回線を通じ、60キロメートル北に位置する同発電所サイトで最後まで稼働していた同3号機 (100万kW、RBMK) を停止させる指示を運転員に与えた。


IAEAは廃止措置で支援約束

事故後14年以上が経過する中でウクライナ政府と先進7か国は同発電所の閉鎖条件について様々な側面から交渉を重ねてきた。「同発電所を2000年までに永久閉鎖する」との了解覚書で95年末に両者が合意したのに基づき、クチマ大統領は今年6月、代替電源として建設中のフメルニッキ2号機およびロブノ4号機 (各100万kW、VVER) を完成させる計画 (K2/R4) への財政支援と引替えに同発電所を15日付けで閉鎖するとの意志を公表していた。今月7日には欧州復興開発銀行 (EBRD) が同計画に2億1,500ドル (236億5,000万円) の融資を決定したのに続き、欧州委員会やロシアなども財政支援を表明しており、必要な総経費として見積られている14億8,000万ドル(1,628億円) の一部になる予定。

同発電所では事故を起こした4号機のほかに同1号機が98年に閉鎖。2号機は91年のタービン建屋火災の後、事実上閉鎖状態にあり、3号機のみが稼働していた。同炉は今月6日から計画外停止に入っていた関係で、送電網からはずされたまま永久閉鎖直前の14日に最小限の出力で運転を再開していた。

同じく14日には国際原子力機関 (IAEA) のM.エルバラダイ事務局長が声明を発表。ウクライナ政府の決断に対して満足の意を表明するとともに、国際的な優先事項に従って同国の原子力施設が安全な状態に保たれていたことを高く評価した。同事務局長は来年が事故後15周年にあたると指摘した上で、事故による放射線がウクライナだけでなくベラルーシやロシア、その他の国々の住民の健康と環境に多大な影響を及ぼした点に鑑み、所内の廃棄物管理や原子炉廃止措置の計画・管理・実施には IAEA はこれまでと同様、可能な限り助力を惜しまない考えであることを明らかにした。

同事務局長はまた、IAEA が事故後の原子力安全計画を実質的に拡充したことに触れ、それらが原子力賠償や廃棄物管理、事故時の早期通報や援助に関する国際協定として実を結んだ点を強調。このほか国際的な原子力安全基準の拡大にもつながったほか、加盟国に安全審査ミッションを派遣するシステムが確立されたとの認識を示している。


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