[原子力産業新聞] 2000年12月21日 第2068号 <8面>

[科学技術会議] 報告書 "社会とともに歩む科学技術を目指して"

新たな知識社会構築めざし

科学技術会議はこのほど、「社会とともに歩む科学技術を目指して」と題する報告書をとりまとめた。同会議が1999年11月に設置した「21世紀の社会と科学技術を考える懇談会」が検討を重ねてきたもので、基本的な姿勢として「科学技術と人間・社会を対置するのではなく、両者の新しい関係の構築を目指す」ことを掲げ、科学技術と人間・社会との関係の現状を検討し、来世紀の展望を試みたもの。基礎研究の充実や開かれた研究体制の構築を通じ、自然科学分野のみならず、人文・社会科学分野の振興も一体的に推進する新たな知識社会の構築を提言している。

報告書は、21世紀の科学技術政策に果たす国の役割として、「あるべき姿を目標に据え、その実現に向けての科学技術政策を戦略的に推進すること」の重要性を述べ、「知の創造と活用により世界に貢献できる国」「安心、安全で国民が快適に生活できる国」「国際競争力があり持続的発展ができる国」を志向するうえでの役割の重要性を指摘している。そのうえで、基礎的な研究の振興など課題について、特に最近みられている、宇宙、加速器、核融合等のような巨額の研究費を要するいわゆるビッグサイエンスの登場、生命科学分野に対しては、必要に応じて国家的な戦略的支援が重要としている。

個別の重要課題としては、情報通信、生命科学、環境科学、物質・材料等が考えられ、その他エネルギー、製造技術、社会基盤等を挙げ、そのなかで環境・エネルギー問題への対応については、「生活環境・自然環境の保全等の観点から、行き詰まりに近づきつつある」なかで、21世紀を人類が生き延びていくためには、このような「開発型の科学技術」がもたらした負の遺産から脱却する必要があり、開発一辺倒から、環境保全や文化財の保存・修復など「保全型の科学技術」を一層推進していくとともに、物の量と速さの重視から物の質とゆとりの重視へと、価値観を転換させる必要がある」としている。 また「21世紀の科学技術は、20世紀型文明の負の側面を克服し、人類の持続的発展を可能にするために、省資源・省エネルギー技術によるエネルギー利用効率の改善、石油代替エネルギーの開発・利用、環境汚染の修復・防止のための技術等を進展させていくことによって、ゴミ問題や地球環境問題を解決し、資源の使い捨てから再利用への「循環型経済社会」へ の転換を図り、新しい文明を築く基盤となるものでなければならない」と強調している。さらに、「消費型環境負荷を下げ、循環型経済社会に転換するには、環境保全の視点を経済の中に組み込むことが必要であり、環境税の導入等についても検討してみる価値があろう」との認識を示している。


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