[原子力産業新聞] 2001年1月5日 第2069号 <1面>

[ITER懇] 国内誘致の意義を確認

原子力委員会 ITER 計画懇談会 (座長・吉川弘之日本学術会議会長) の第14回会合が12月25日、東京都千代田区で開催され、焦点となっていた国際核熱融合実験炉 (ITER) の我が国への誘致を進める方向で意見が集約された。原子力委員会核融合会議で行われてきた議論を踏まえ、将来に向けた核融合エネルギー開発と我が国の国際貢献の観点から ITER 計画の推進は意義を有することを基本的に確認した。ITER 懇談会は今月末の会合で最終報告書を取りまとめる。


今月末にも最終報告書

会合では、井上信幸委員が核融合会議が先月14日にまとめた ITER 計画に対する基本的考え方を報告した。その中で、燃焼プラズマの制御を実証することが最重要で不可欠のステップであり、ITER はそのための最も現実的な方式だとの考えを確認。ITER 計画の推進に当たっては、人材育成と学術研究の自主性確保を前提として、多様な核融合研究の幅広い基盤の充実発展に十分な配慮が必要だとして、「核融合研究の総合的発展に必要な財源確保が不可欠だ」との一致した認識をあらためて示した。

そのうえで、「大学の核融合研究の継続に必要な財源が保証されないおそれがあるとして、これがクリアされない限り ITER の国内誘致に賛成できない」とする考えがあったことも付け加えた。

これを踏まえて、研究の資源配分や推進のための仕組み・あり方を中心に意見が交わされたが、委員の中から特に強く聞かれたのが、国内誘致された場合、ITER に多額の資金が投入される一方で ITER を支える核融合研究への資金投入の減少を危惧する声。ITER を多様な核融合研究の「全体計画」の中に位置づけることが必要で、集中的に推進することは適切でなく、その他核融合研究も「同じ重み」をもつという主張だ。こうした意見に対して吉川座長は「ITER 懇談会として考えるべきは、資源の配分の問題より、我が国が ITER を国際的科学プロジェクトとして進める真の意義ではないか」との認識を示した。

委員からは、このほか「省庁統合により、ITER 計画を一つの省で進めることになる。今後は適切な審議体制を確立する必要がある」「「ゼロ・サム的」な研究予算配分の議論は無意味。ITER を今後に向けた好例として国家的な位置づけをすべき」などとする意見が出された。

この日の議論を総合したうえで、吉川座長は懇談会の結論の方向性として (1) 将来のエネルギー開発に向けての ITER を推進する新の意義を確認する (2) 財源問題に踏みこまない (3) 結論としての両論併記は避ける --- などとし、ITER 国内誘致に向けて政府が政策決定できる結論を最終報告書に盛り込みたいとした。

次回 ITER 懇談会は、今月31日に開催の予定でこれまでの議論を踏まえた最終報告書を審議する。


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