[原子力産業新聞] 2001年1月5日 第2069号 <4面>

[年頭所感] 通商産業大臣 平沼赳夫

エネ安定供給が基本

新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。

(二十一世紀に向けて)

振り返ってみると、20世紀は我が国にとって、極東の島国から2度の大戦を経て世界有数の経済大国へと発展した後、「失われた10年」といわれる苦しい時期を経験した、激動の世紀でした。この100年間、日本を支えてきた先人たちの努力にあらためて敬意を表するとともに、これから21世紀を「新たな発展の世紀」にすべく、最大限尽力してまいりたいと考えております。

(経済産業省の発足にあたり)

通商産業省は本年1月6日に、経済活力の向上、産業の活性化、対外経済関係の円滑化などを任務とする経済産業省へと生まれ変わります。国際的な大競争時代において内外経済の問題に総合的に取り組む経済産業省の果たすべき役割はますます大きくなってきており、新たに設置される経済財政諮問会議や総合科学技術会議、あるいは高度情報通信ネットワーク社会推進本部などとも連携しつつ、時代の二ーズに応えた経済産業政策を遂行できるよう積極的に取り組んでまいる所存です。

(当面の経済運営と中長期的課題)

我が国経済は、企業部門を中心に総じて穏やかな改善が続いておりますが、依然、雇用や個人消費は力強さを欠いており、米国やアジアなどの海外経済環境などを注視しつつ、細心の注意を払った経済運営を行っていくべきと考えております。

一方で、中長期的に展望すれば、我が国経済には大きな潜在的能力があると考えております。この潜在的能力を存分に引き出すためには、不良債権問題など足下の問題を先送りすることなく、金融・産業の両サイドからの対応を加速化させるとともに、新しい成長・発展に向けて、自由闊達で創意工夫にあふれた経済活動を可能とするような環境を整備していかねばなりません。そのためには、経済構造改革と IT 革命の推進は、欠くことのできない我が国の未来への重要なキーワードであると考えております。

(経済構造改革)

経済構造改革については、昨年、産業新生会議での活発な議論を踏まえ、新たな行動計画を閣議決定いたしました。これは、企業法制の見直し等創造的な経済活動の促進、エネルギー等の分野での高コスト構造の是正、少子高齢化や環境制約を新たな成長エンジンに転化させるための環境整備など、我が国の新たな発展・成長のために取り組むべき課題を明らかにしたものです。具体的な行動計画は約260項目で、うち半分の約130項目を今後3年以内に、約100項目は今後1年以内に実施することを定めております。今後、こうした施策を迅速かつ強力に推進することによって、力強い成長と活力にあふれる経済社会を現実のものとしていく考えであります。

(環境/エネルギー政策)

環境政策については、環境問題の克服が新たな経済の発展要因となるような経済社会システムを構築していくことが重要であると考えております。地球温暖化対策については、先般開催された気候変動枠組条約第6回締約国会合、いわゆる COP6 では具体的な制度の構築について合意にいたりませんでしたが、引き続き積極的に国際交渉に取り組んでまいります。一方で、市場の仕組みもうまく活用し、地球環境問題への取組みと経済活動や国民生活が両立し得る枠組みを構築してまいる所存です。循環型社会の形成については、本年4月1日より施行される資源有効利用促進法や家電リサイクル法等の関連法の円滑な施行を図るとともに、リサイクル対策の強化 (Recycle)、廃棄物の発生抑制対策 (Reduce)、部品等の再使用対策 (Reuse) といった3R対策を積極的に講じてまいります。

エネルギー政策については、今後も引き続き「環境保全や効率化の要請に対応しつつ、安定的なエネルギー供給を実現すること」が基本目標であります。最近の我が国のエネルギー需要は、民生・運輸部門を中心に一貫して増加しております。一方で、原油価格の乱高下や原子力立地の長期化、環境問題への関心の高まり、エネルギー分野における自由化の進展等、各種の情勢変化が見られます。これらを踏まえ、今後のエネルギー政策のあり方について、総合エネルギー調査会等において、昨年4月から幅広い検討を行っており、本年春から夏頃を目途に取りまとめを行いたいと考えております。


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