[原子力産業新聞] 2001年1月5日 第2069号 <4面>

[年頭所感] 資源エネルギー庁長官 河野博文

安全確保に万全期す

新春を迎えるに当たり、謹んでお慶び申し上げるとともに、資源エネルギー行政に関する所感の一端を述べ、新年の御挨拶とさせていただきます。

本年は21世紀の幕開けとなる年であり、「1年の計は元旦にあり」という諺に倣えば、今世紀のエネルギー政策の方針をしっかりと考えるべき重要な節目の年となります。100年前を振り返りますと、我が国の一次エネルギー総供給は、薪炭と石炭が約半分ずつで、石油が約4%という状態でした。21世紀においても、環境保全への要請や技術革新等により、エネルギー供給源が劇的に変化する可能性があり、100年後のエネルギー供給の状況までを予見するのは大変難しいものでありますが、長期的な変化も視野に入れつつ、新しい世紀のエネルギー行政に第一歩を記すという重責を担うことに、私といたしましても、特に身の引き締まる思いがいたします。また、組織面でも、本年1月6日の省庁再編を機に、機能を重視した新体制に再編するとともに、原子力等の規制部門として原子力安全・保安院を創設したところであり、新たな組織で新たな世紀の課題に効果的に対処してまいりたいと考えております。

申し上げるまでもなく、エネルギーは国民生活及び経済産業活動の基盤であり、その安定供給の確保は極めて重要な課題であります。昨年の我が国のエネルギー需要は、民生・運輸部門で一貫して増加したことに加え、産業部門のエネルギー消費も景気回復により急激に増加いたしました。また、供給面では、原油価格の大幅な変動や原子力発電所の立地の長期化、環境問題への関心の高まりを背景とする新エネルギー導入拡大に対する期待の高揚、高レベル放射性廃棄物の処分に向けた法令・実施体制の整備、石炭政策の円滑な完了のための法整備等の大きな変化がありました。こうした需給両面の変化を踏まえ、昨年から総合エネルギー調査会等において、エネルギー政策の在り方について検討を行っており、本年春から夏頃を目途に取りまとめを行う予定であります。

原子力政策に関しては、安全規制関係は、独立の新たな機関である原子力安全・保安院が担うこととし、推進関係は資源エネルギー庁本体が引き続き司ることとなります。原子力の利用は、エネルギーセキュリティのみならず、環境保全の要請にも資するという観点からも重要でありますが、安全確保に万全を期すことが大前提であり、「原子力安全・保安院」に安全規制をほぼ一元化し、人員も増強して、規制の実効性の向上、透明性の確保、防災対策に万全の対応を図ってまいります。一方、利用面では核燃料サイクルの確立に向け、一昨年来、中間貯蔵が実現し、高レベル放射性廃棄物の処分の枠組みの制度化及び実施体制の整備を行った外、昨年10月には、六ヶ所再処理工場の使用済燃料受入れための安全協定が締結されました。今後とも、国民への広報活動や、昨年成立した「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」等に基づいた原子力立地地域の振興施策の充実等を通じ、原子力の利用への理解を深め、関連施設の立地の円滑化に着実に取り組んでまいる所存です。


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