[特集] 新局面を迎えるサイクル事業
建設進む六ヶ所再処理施設
核燃料サイクル事業は、六ヶ所村の再処理施設が建設の最盛期を迎え、同施設への使用済み燃料搬入が本格的にスタート、MOX 燃料加工事業も事業主体が決まるなど具体的な進展を見せている。今号では、新たな展開を見せるサイクル分野の動きを写真を交えて紹介する。
建設、最盛期を迎える
2005年7月の運開を目指している再処理工場建設現場では、大小様々な約100基のクレーンが導入され、現在急ピッチで建設が進められている。
すでに、使用済み燃料を貯蔵しておく巨大な貯蔵プール (タテ約27m×横約11m×深さ約12m) 3基は完成。燃料受入れを開始しており、また前処理工程や分離・精製施設、ウラン脱硝施設、高レベル放射性廃棄物ガラス固化施設などといった、各工程ごとの建屋も、順次建設が進められている。
11月末現在の工事進捗率は56.4%。これは当初の予定よりも約1か月早く、関係者達の努力の結果、非常に順調なぺースで工事が行なわれている。
2000年12月20日現在の建設現場は、12月に第1回目の使用済み燃料を受け入れた使用済み燃料貯蔵プール (既に完成済み) のほか、数多い建屋 (前処理、分離、低レベル廃棄物再処理、ウラン酸化物貯蔵、精製、ウラン・プルトニウム混合酸化物貯蔵ほか) のほとんどが、その外観がつかめるほどに建設が進んでおり、工事も折返点を過ぎたことが実感として感じられた。
そのうち、使用済み燃料のせん断・溶解が行われる「前処理建屋」は最も建設が進んでいるもので、今年4月からは水を使用した機能確認試験が予定されている。各建屋の中央制御室が集められた「制御建屋」の前処理建屋を担当する「アイランド」には一部制御盤も設置され、すでに電気計装関係の試験が行われている。
また、核分裂生成物およびウラン・プルトニウムの分離が行われる「分離建屋」では、「パルスカラム」や、臨界形状のドーナツ型のタンク「アニュラベッセル」などがすでに据え付け済みといった具合で、すでに建設は内部機器の搬入・据え付けが行われる段階に進んでおり、工事の順調な進捗が伺える。
日本原燃では、試運転期間として再来年の2003年1月から約30か月を予定しているが、現在の良好な進捗率を維持したまま仮に予定よりも早く建設工事が完了した場合にも、その分は試運転期間の延長に振り分ける方針で、営業運転開始を早めることはないとしている。
なお、完成すると、再処理工場の最大処理能力は年間800トン・ウランで、100万kW クラスの原子力発電所約30基分の使用済み燃料を処理する能力を有することになる。
使用済み燃料、本格搬入スタート
青森県、六ヶ所村および周辺市町村と日本原燃の間で、全国の原子力発電所から出た使用済み燃料の、原燃・六ヶ所再処理工場使用済み燃料貯蔵プールヘの搬入にともなう安全協定が締結されたことを受け、第1回目となる使用済み燃料の搬入が19日に実施された。
19日早朝にむつ小川原港に人港した輸送船「六栄丸」 (約 5,000トン) から降ろされた使用済み燃料計140体 (約 24トンU) は、専用の輸送車両に積み替えられ、同日中には、再処理工場の使用済み燃料貯蔵プールヘと搬入された。
今年度末まで、さらに今回の搬入含めて計97トンを受け入れる。計画では、全体として東北電力女川原発から約11トン、東京電力福島第2原発から約33トン、中部電力浜岡原発から約11トン、四国電力伊方原発から約17トン、九州電力川内原発から約13トン、日本原電東海第ニ原発から約11トンの合計約97トンを受け入れる。日本原燃では、2003年1月から再処理工場の試運転開始を計画しており、さらに試運転で使用済み燃料を利用するフェーズには、2004年7月から入ることを予定している。その直前の2004年3月までに、1,279トンU の使用済み燃料が、全国の原子力発電所から搬入される計画だ。
MOX加工事業化も前進
昨年11月末に電気事業連合会の要請を受け、日本原燃が事業主体となってウラン・プルトニウム混合酸化物 (MOX) 燃料加工事業化が具体的に進展することになった。
日本原燃では、電気事業連合会から同事業に関する調査・検討を受託して、昨年の11月末までにその結果を報告。電気事業連合会では MOX 加工事業化は可能との判断を行って日本原燃に事業主体になることを要請した。加工施設の建設は六ヶ所村再処理工場内の隣接地点への立地が前提となる。
計画では、MOX 燃料加工工場の規模は製造能力最大130トン/年 (再処理工場で1年間に回収される MOX 粉末を原料に、将来の変動要因を考慮に入れても全量 MOX 燃料に加工できる容量として設定)、操業人員については約300人が見込まれている。また操業開始時期は、燃料製造に必要となる MOX 粉末の確保と、工場建設に要する期間などから、2005年 (再処理工場操業開始年度) の3〜4年後になる。
日本原燃は今後、青森県および六ヶ所村への新規立地の申し入れに向けて、MOX 燃料加工工場の基本設計など、事業の詳細を検討していくとしている。なお同事業を推進するための組織として、燃料製造部を昨年12月1日付けで青森市の本社に設置する事も、合わせて明らかにされた。
昨年12月に開催された総合エネルギー調査会の原子力部会にも、同計画の骨格が報告され、特にプルトニウムの取扱技術や保障措置、燃料加工技術の面から核燃料サイクル開発機構などとの全面的な協力関係をもって、いわば「国産技術を集大成する形」で事業化が進められることになる。
ウラン濃縮−新技術開発へ
ウラン濃縮技術は、新型の遠心濃縮機の開発が進められることになって新たな局面を迎えている。
開発にあたっては、核燃料サイクル開発機構、原燃マシナリーおよび日本原燃の技術書を結集して、六ヶ所に「ウラン濃縮技術開発センター」が昨年11月に設立された。
この開発センターに、これまでの遠心機開発の成果、知見を集約して、昨年六ヶ所に完成した研究開発棟を我が国の濃縮技術開発の拠点とし、新型遠心機の開発に全力で取り組む。
なお、運転中の遠心分離機については、分解調査を行っており、その知見を反映するとともに、引き続き運転長期化のための諸方策を検討し、新型遠心機による生産体制への円滑な移行を図ることになる。
日本原燃では、これまでの高度化機開発での反省も踏まえ、構成要素試験に2年程度、基本仕様の確証試験に4年程度、その後4年間程度で実証試験、最終的な導入判断、許認可取得、建設工事を進め、2010年頃を目途に新型遠心機による年産を開始し、10年程度をかけて 1,500トンSWU/年規模の達成を目指す。
同社は、これまでウラン濃縮工場の第2期後半分 (450トンSWU/年) への高度化機の導入に向けて、遠心分離機の回転胴底部部品の一部仕様を見直し、性能確認等の試験を行っていたが、昨年3月末に当該部品の試験片表面にウラン化合物の付着と腐食の痕跡が確認されたため、試験結果を総合的に評価・検討した結果、当該部品に認められた腐食の痕跡は、応力腐食割れに至る可能性があることがわかった。その一方で、当該部品の構造を変更することで、応力腐食割れの発生防止が可能と判明した。
しかしながら、大幅な構造変更のため、総合機能の再確認も含め最低5年程度、その後の実用化に向けた実証試験、許認可取得、製造などの期間を入れると、導入までに9年程度かかると見込まれていた。一方、核燃料サイクル開発機構では、1992年度から、より高性能化を目指した遠心分離機 (先導機) の開発を続けており、現在運転中の遠心分離機の2.5から3倍の分離性能を持つ高度化機よりさらに高い分離性能 (4から5倍) を確認している。これについてもその実用化に向けては、更なる実証試験が必要となる。
以上のことを総合的に評価した結果、日本原燃では、核燃料サイクル開発機構の濃縮技術を受け継ぎ、高度化機開発で得られた知見を組み合わせることにより、高度化機の構造を変更した場合と比べて1年程度の期間の差で、より高性能で経済性に優れた新たな遠心分離機を開発できる見通しを得たため、開発機種を新型遠心機に移行することとした。
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