[原子力産業新聞] 2001年1月25日 第2072号 <1面>

[インタビュー] 藤家原子力委員長に聞く

機能性に富む組織を

新長期計画をまとめあげ、新世紀の幕開けとともに内閣府に移行した原子力委員会。その委員長に学識経験者として初めて藤家洋一氏が就任した。

「自ら長く原子力に携わってきたことの集大成とするため、長期計画策定に関わった経験を踏まえて、誠実かつ積極的に大任に取り組んでいきたい」--- 同氏は抱負をこう述べる。

難しい時代の原子力政策の舵取り役として、委員会のあり方、取り組みなどを藤家委員長に語ってもらった。


--- 内閣府の原子力委員会になった意義は。

藤家委員長 内閣府に移行したことは、極めてタイムリーではないか。時代や国際環境の変化を踏まえ、21世紀の社会、自然環境に適合した原子力の研究開発を進めるために、「一段高い立場」というよりも「一段と広い視野で考えられる立場」に置かれたものと理解したい。全体像の構築と長期展望を示すことにつながる。我が国が原子力先進国、科学技術創造立国とするならば、科学が目指す領域と技術が追い求める世界を調和させて原子力研究開発を進めていくことこそ、一段広い視野から眺めて必要なことだ。社会、経済、ときには政治的視点も求められることになるだろう。内閣府に移行した重要な意味はここにあると思う。

--- 委員会が出したメッセージの中で国民との対話が重要だとしているが。

藤家委員長 我が国の原子力利用は、民主主義のもとでの国民の理解や支援と同時に、厳しい監視の目があって、ここまで進むことができたと考えるが、21世紀も原子力政策がその延長線上に成り立つと、世の中は言っていない。科学で何を考え、技術でそれをどこまで達成していくかを社会に向かって伝えなければならない。すぐに原子力をすべて理解してもらえるとは考えにくいが、やさしさは保ちつつも専門性を備えた対話を心がけ、努力していく必要があることは確かだ。

地方の方々との相互コミュニケーションも積極的に図りたい。原子力委員会の考えや長期計画の意義等を伝えていくと同時に、地方の方が原子力を受け止める上での思いや課題について聞くことの大切さを実感している。そのためには、原子力委員会の地方開催も考えられるし、自治体の首長との対話もあるだろう。

--- 委員会の活動を支えるタスクフォースについては。

藤家委員長 委員会の組織として、従来の専門部会や懇談会とは違う機能性に富んだ形のものが重要だと考えている。種々の問題を短期間で検討したうえで、委員会や専門部会等の場に議論を移していくことが必要だろう。タスクフォースは当面、機能面を重視したブレーンストーミングの色彩が強いものになるのではないか。継続期間は2〜3か月程度。これまでの「原子力参与」の方々に対して、個人として専門領域で様々な能力を活かしていただけるようお願いするつもりだ。

--- 今後研究開発の進展をどう見極めていくべきか。

藤家委員長 今世紀の文明は「大量生産・利用からバランス・調和」にシフトしており、原子力もその中にある。研究開発についても、目標は立ててもらったうえで、それを数年ごとに評価し、結果が良ければ次のステップに進むし、悪ければ中止する。この考えが、従来の長期計画で示されてきたタイムスケジコールに代わる新しい視点、評価機能だ。今後の研究開発には、いかにすれば良い成果が出せるかという洞察力が必要となる。努力さえすれば好結果につながるという図式の時代ではないだろう。

--- 原子力の人材確保問題が叫ばれているが。

藤家委員長 新長期計画で強調したことは、発電技術にとどまらないすそ野の広い科学技術としての原子力の推進だ。科学の汎用性が高まっている今日では、基礎基盤を明確にしたうえで応用技術を探っていくことが新しい方向となるだろう。原子力分野への人材供給源は決して原子力工学系に限られているわけではない。長計で示されたように、原子力はまだまだ若者が夢を託せる十分な将来のある分野だと確信する。


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