[原子力産業新聞] 2001年2月1日 第2073号 <1面>

[インタビュー] 佐々木原燃社長に聞く

「情報発信企業」として、サイクル事業完結に全力

原子力委員となった竹内哲夫前社長からバトンタッチし、1月6日に日本原燃の新社長に就任した佐々木正氏。燃料サイクル事業「結実の世紀」へ踏み出した同社の事業展開などについて話を聞いた。

就任されての抱負は。

佐々木社長 日本原燃として、これまでの路線を継続し前進させるべきものと、新たに展開をはかる事業に創造的に行うべきものとの双方をバランスよく進めることが何よりも重要だ。社会や産業界が変化する中で、効率的な経営、適切な組織、人材育成など、自らの改革をはかり企業としてあるべき姿に向けおおいに努力していきたい。

--- サイクル事業全般について。

佐々木社長 我々は、核燃料サイクルの確立によりエネルギーセキュリティ確保を目指すことが国の目標であることを確認して事業に取り組んできたし、今後もそうだ。昨年は、安全協定締結で再処理事業が前進したことに加え、濃縮事業での進展開、MOX 加工事業主体化などにより、当社事業の節目の年となった。今年は、要となる再処理事業で建設から運転へのモード切替の時期にあたる。4月からはメーカー側による試運転も開始される重要な時期を迎え、サイクル事業の完結の意義をさらに痛感している。

--- 新長期計画の中でいわれる民間事業の役割については。

佐々木社長 国の長期計画に示された燃料サイクル政策はとりもなおさず我々の事業であり、当社以外にこの事業を行うところがないのだから、責任の重さを実感しているのが正直なところ。民間企業のもつ活力や効率性を活かしての事業遂行こそ、国が我々に期待する最大の点だろう。だからこそ、国に対しても民間の立場ら我々の考えを明確に伝えていくことも求められるだろう。

--- 濃縮技術開発の新展開については。

佐々木社長 昨年11月にウラン濃縮技術開発センターを設置して、60名程度の陣容で技術開発に取り組む。我が国のウラン濃縮技術開発の「総力を結集して」取り組むことになる。器はできたので中身を整えていくわけだが、再処理や MOX 加工でもそうであるように、サイクル機構の力を借りずに技術開発が進むわけはない。国の長期計画を関係機関がまさに一体となって担っていくという気構えでなければならない。

--- MOX 燃料加工事業への今後の取組みは。

佐々木社長 事業主体を引き受けた以上は、MOX 加工事業の成功への地固めを怠りなく進めていく決意だ。当面は基本設計を行い、地域の方に立地を申し入れることになる。そのためには十分な理解を得られる計画を整えなければならない。

--- さらに地域に根ざした事業の発展に向け、地元との関係で重要なことは。

佐々木社長 サイクル事業は、当社にとって重要だからというだけでなく、国民や地元の方に理解を得て初めてなし遂げられる事業。そのため、「情報発信企業」としての役割を十分果していきたい。時代とともに、我々に対して地域社会の望むものは変わっていく。一言で地域振興といっても幅広いが、新世紀の事業の出発にあたって当社として果たせる役割について考えていかなければならない。

従来からの地元との協調関係をさらに強いものにしていく中で事業の進展にあわせ地元の二ーズを見極めて、真に地域が望むものは何かを念願において事業を進めたい。

--- 本社を六ヶ所村に移転するという計画は。

佐々木社長 自己改革の一つとしての、いわば「本社機能の六ヶ所村集中化」ということだ。再処理工場が運転する段階に入ろうとするのにあわせ同事業を円滑に進める姿勢を明確にしたもので、共通部門の簡素化など、技術部門の計画管理業務と現業業務を一体の中で行う方向に進むことは組織の中の効率的運営として大きな柱になる。再処理操業の段階をにらんで他の事業とあわせ円滑にいくようなタイミングで「六ヶ所村集中化」を実現したい。


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