[原子力産業新聞] 2001年2月1日 第2073号 <2面>

[原子力安全委員会] 防災部会、緊急医療のあり方を中間報告

「命の視点で」対応具体化

原子力安全委員会の原子力発電所等周辺防災対策専門部会 (部会長・能澤正雄 (財) 高度情報科学技術研究機構顧問) が1月25日開かれ、「原子力災害における緊急被ばく医療」の中間報告などが行われた。

緊急被ばく医療に関する中間報告は、同部会に設けられた緊急時医療検討ワーキンググループ (主査・前川和彦東大医学部教授) が昨年5月から検討しているもので、一昨年の9月に発生した JCO 臨界事故での教訓をいかすために、医療の立場からいわば「命の視点」に基づき、機動的で実効性のある緊急被ばく医療のあり方とその具体策を検討しているもの。報告の主な点は、医療体制について従来防災指針に示されている一次、二次、三次という段階的な医療を見直し、現在医療現場で使われている初期、二次、三次という医療体制の考え方を盛り込んだこと。

初期被ばく医療は、主に避難所などで実施する被ばく量の測定 (一次スクリーニング) などを想定し、必要に応じて第二次被ばく医療機関へと搬送する段階にあたる。報告では、救急蘇生や合併損傷の初期医療などが行える立地近隣の医療機関を地域の防災計画で指定することなどを提言している。

二次被ばく医療体制については、主に入院加療が必要な患者の処置として、局所被ばくの診療診断の開始、高線量被ばく患者の診断や線量評価・治療、内部被ば<に対する診断などを想定。放射線医学総合研究所などの三次被ばく医療体制との連携をとれるようネットワークを構築することもあわせて提言している。医療ネットワークの展開に関しては、今後具体的に同ワーキンググループで検討を詰めるという。

また、原子力災害や、より小規模の被ばく事故について、機動的に対応が必要との考えから、報告のなかに「医療介入の原則」を盛り込むことにし、具体的な措置について、別途検討会を設けて検討することにした。


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