[原子力産業新聞] 2001年2月8日 第2074号 <2面>

[サイクル機構] カザフと高速炉の安全研究

炉心損傷時、再臨界を防止

核燃料サイクル開発機構は2日、カザフスタンの国立原子力センターと大型高速炉の安全性試験に関する共同研究計画についての契約を締結した。サイクル機構にとって同国との協力プロジェクトは初めてとなる。

FBR の再臨界防止実験を意味する言葉の頭文字を取って「EAGLE」プロジェクトと呼ばれるこの研究は、両機関がカザフスタンのクルチャトフ市にある原子力センターの試験用原子炉 IGR を使って行うもの。IGR は黒鉛減速パルス出力炉で、数秒間という短時間に大きい出力パルスを与えて、試験用の燃料を溶融させることが可能なため、軽水炉燃料や高速炉燃料の破損や挙動を観測するための研究に利用されている。

高速炉炉心が損傷した場合でも、溶融した燃料が炉心から早い時期に排出されれば過酷事故への拡大が回避できることを、実験とともに評価することで確認するのがねらい。将来の大型高速炉の固有安全性特性を確認することにもつながるという。

IGR は約60本の燃料ピンまたは10kg程度の試験燃料を短い時間で溶解できる高い加熱能力を持つ試験炉。日本原子力研究所にある原子炉安全性研究炉 (NSSR) より規模は大きい。

炉心損場が起きた時には溶融した炉心物質がどのように運動するかでその後の出力が変化する。炉心損傷解析では、炉心から早い段階で燃料が流れ出る事象が現実的と想定され、大きな出力上昇には至らないと評価されている。

共同研究では、炉心損傷時の再臨界の主な要因となる溶融燃料がひとつに集中する動きに至らないことや、これを確実にするための設計方法の有効性を確認することで、再臨界可能性の排除につながる見通しを得ることにしている。具体的には炉心物質が早期に炉心外へ流出することを、損傷炉心の一部を模擬した実験により確める。試験用の燃料には低濃縮酸化ウラン燃料が用いられる。

サイクル機構では、来年度より第2期目に入る FBR サイクル実用化戦略調査研究を実施しており、同研究の終了する2005年頃までに、EAGLE 研究による実証を得たいとしている。

カザフスタンは旧ソ連からの独立後、非核宣言を行うとともに平和利用に限定した原子力研究・開発を進めてきている。カザフスタンとは二国間原子力協定がないことから、口上書の交換に基づいて共同研究を行っている。我が国とはこれまで、原子力発電技術機構との間で覚書きに基づき軽水炉の安全性研究を共同で実施している。

EAGLE 計画は2004年度までの実施が予定されていて、契約の規模は約8億円だという。


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