[原子力産業新聞] 2001年2月8日 第2074号 <2面>

[原研] アクチノイド原子内包フラーレンを分離精製

都立大などと共同で

日本原子力研究所は1月26日、同研究所先端基礎研究センターが東京都立大学および東北大学と協力してウラン、ネプツニウムなどのアクチノイド原子を、フラーレン分子の中に閉じ込め、これを別のフラーレン生成物から分離・精製することに世界で初めて成功したと発表した。

フラーレンは C60 が代表的で、炭素原子60個がちょうどサッカーボールのように結合した「かご型構造」の分子のこと。フラーレンの特徴的な構造と性質から、物質科学をはじめ生命科学、宇宙・地球科学などの幅広い分野で関心が高まっているという。特に、かご型の構造内に金属原子を取り込んだ金属内包フラーレンは、内部金属と周りのフラーレンの相互作用で特徴的な電子特性を持つといわれていて、特有の化学反応性や物性を示すと考えられている。こうした点で新機能性材料開発への応用か注目されている。

研究に成功したグループは、アクチノイド元素を炭素棒に浸透させたものを電極としてアーク放電することで、アクチノイド原子内包フラーレンを合成。それを有機溶媒で回収した後、液体クロマトグラフ法を利用して、安定したアクチノイド原子内包フラーレンを選択的に分離精製したというもの。

今回の研究成果により、今後はアクチノイド内包フラーレンを基盤とした新規化合物の合成や、アクチノイド原子の複雑な電子状態の解明に向け大きな進展が期待されるという。


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