[原子力産業新聞] 2001年2月22日 第2076号 <1面>

[原子力安全委員会] 安全目標策定へ審議開始

確立論的手法を用いてリスク評価

原子力安全委員会の安全目標専門部会は16日、初会合を開き、確率論的安全評価等を活用した定量的目標策定を含む安全目標に関わる検討に本格的に着手した。人文社会系など幅広い分野の専門家で構成し、「どこまで安全ならば十分に安全といえるのか」、多角的に社会と原子力安全確保のあり方を考え、2年後をめどに安全目標の策定を目指す。


安全目標専門部会 国民との議論必要

冒頭、松浦祥次郎原子力安全委員長があいさつし、一昨年の JCO 臨界事故調査委員会の提言を踏まえた委員会としての安全確保に対する取組みを紹介した。委員長はその中で、原子炉施設の安全確保における「決定論的アプローチ」と「確率論的アプ□ーチ」の例を挙げて説明。「決定論的アプローチ」が代表的な事象の選定と保守的な解析・評価に基づくものである一方、「確率論的アプローチ」は、想定される全ての事象を基に現実的な解析と評価を用いて、リスク (頻度と影響) を考慮した効果的な安全確保対策を導き出す手法だとした。

こうした確率論的な考えはこれまでの規制の中に組み込まれている例があまりないとしたうえで、安全確保の重要な指標としての安全目標の策定を、技術とともに広く社会的な側面とのバランスを図りつつ審議していくことが重要だとした。

また、松原委員は部会が多様な分野の専門家で構成されることから、「単語の概念ひとつとっても、検討にあたっては同じ認識を共有する必要がある」ことを指摘した。

この後、部会長に近藤駿介東京大学大学院教授が選出され、部会長代理に相澤清人核燃料サイクル開発機構理事が指名された。

続いて、委員からは部会審議の内容や方法などに対して様々な意見が出された。

「供給者側がエネルギーセキュリティの観点からエネルギーオプションの中で原子力の便益をどう位置づけているのか、市民が社会的要素の中で原子力にどの程度の重みを置いているかの論点整理がまず重要」「確率論を規制の運用に反映させるのならば適切に適用されていることを国民が確かめるための検証が必要だが、原子力事故の場合は検証が難しい」「確率という概念は漠然と理解されている。国民の中に確率論の考えが浸透するには相当な時間が必要。国民に十分理解してもらうのには検討する側で確率についてのコンセンサスが大事」「リスクに関して国民と同じ土俵で議論することが大事」「危険の起こるメカニズムを分かりやすく説明できる仕組みを考える必要もある」「他の産業と比べリスク評価の概念が進んでいる原子力界から社会に投げかけていくことは有意義」--- などとする意見が述べられた。

会合では、特定の事項を詳細に審議するために分科会を設置することも了承された。


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