[原子力産業新聞] 2001年3月1日 第2076号 <2面>

[総合エネ調] 長期エネルギー需給見通しの検討で「基準ケース」を策定

目標値を7%超過の見通し

総合資源エネルギー調査会総合部会のエネルギー政策ワーキンググループ (WG、委員長=茅陽一東大名誉教授) が2月23日開かれ、長期エネルギー需給見通しの検討にあたっての「基準ケース」をとりまとめ、了承した。

基準ケースは、関連エネルギー政策や電力の供給計画などに従来掲げられている対策が実現した場合のエネルギー需給のありようを評価モデルを使って描き出したもの。モデルケース試算にあたっては、いくつかの部門にわけて評価モデルを使い経済成長率を2%程度と設定、為替水準や人口・世帯数など需給両面で細かく条件を置いて計算した結果、2010年度における最終エネルギー消費は4億900万キロリットル (原油換算) となり、現行のエネルギー見通しの対策ケースで目標としている4億キロリットルを若干上回る水準となった。一次エネルギー供給をみると、2010年度時点では電力化率が高まる見込みであるため、6億2,900万キロリットルになると見込んでいる。これも現行のエネルギー見通しの対策ケース6億1,600万キロリットルを上回る結果となった。

問題の炭酸ガス排出量は、原子力発電など非化石エネルギーの比率が若干 (17.9%から19.6%へ) 高まることなどから、99年度時点よりは改善されるものの、目標とする90年度レベル (排出量=炭素換算で 2億8,700万トン) まで減らすことができず、7.1%分 (2,000万トン) 増加するとの結果になった。

これは石炭火力の比率か上がるためで、原子力発電の立地が計画通りに進んでいない点を踏まえたもの。供給面で、すでに足元から石炭火力が増えており、2010年度時点の一次エネルギー供給ベースで石炭火力は現行のエネルギー見通しでの対策ケースが見込んだ14.9%を大幅に超える21.7%に増える公算だ。

原子力発電の立地が難航している状況を踏まえ、2000年度の電力供給計画に掲げられている新規の原子力発電所13基という数字を採用していることから、原子力は現行の対策ケースで見込んだ17.4%から14.9%へと見通しが下げられている。これを補うため、コスト的な優位性をもつ石炭火力がその部分を補うと見込んでいるもので、その結果、環境負荷の90年度レベルヘの抑制が現実としてかなり厳しいという状況が描き出されたもの。

なお、需要の面では、産業部門が2010年度の最終エネルギー消費で1億8,700万キロリットル (現行のエネルギー見通しの対策ケースから 500万キロリットル下回る) との結果になった。民生家庭部門では、2010年度の最終エネルギー消費が6,100万キロリットル (現行対策ケースとほぼ同水準の需要レベル) となる見込みが示されている。

WG では、各委員から基準ケースをどう考え、今後の目標ケースを議論するのかについて意見の交換か行われた。また原子力発電の立地が停滞した場合に国民生活への影響はどうなのか、いわゆるモラトリアムシナリオを作って明確にすることなどが了承された。電力自由化の問題についても委員の間で大きな問題であるとの認識で一致した。

ことに、最近では電力需要の先行きをみたうえで、東京電力が新規電源の一時凍結方針を示しており、今後電力業界の供給計画に不透明感が高まる可能性もあるため、自由化や抜本的な需給構造の変化を踏まえた議論も必要になりそうだ。

同 WG では今後、複数のシナリオを検討して総合部会に提示、総合部会と需給部会が合同して複数シナリオの検討をつめた上で国民からの意見を聞き、最終的な政策パッケージともいえる「目標ケース」の取りまとめを行うことにしている。

一次エネルギー供給の見通し
(単位:原油換算百万kl)
年度
項目
1990年度1999年度2000年度2020年度今回試算 (参考値)
現行見通し対策ケース今回試算基準ケース
一次エネルギー供給526593616629662
エネルギー別区分実数構成比%実数構成比%実数構成比%実数構成比%実数構成比%
石油30758.330852.029147.228044.528142.4
石炭8716.610317.49214.913621.716324.7
天然ガス5310.17512.78013.08914.27611.5
原子力499.47713.010717.49314.911216.9
水力224.2213.6233.8203.2203.0
地熱10.110.240.60.80.10.80.1
新エネルギー等71.371.1193.191.4101.4

Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.