[原子力産業新聞] 2001年3月1日 第2077号 <2面> |
[原子力安全委員会] 横浜で第2回目地方原子力安全委開くJCO 事故調査報告めぐり議論第2回地方原子力安全委員会が2月24日、横浜市内で開催された。 原子力安全委員会では、地域の声を直接聞くことを目的に、昨年8月には東海村に場所を移してはじめての地方開催を行った。今回は、2回目として、「ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告から1年を経た総括」をテーマにとりあげ、原水爆禁止日本国民会議と原子力資料情報室による「JCO 臨界事故総合評価会議」の参加を得て、安全委員会のもとに設けられた JCO 事故の調査委員会 (委員長・吉川弘之日本学術会議会長) の報告の内容などをめぐって意見が交わされた。また「新たな防災対策体制について」をテーマにとりあげ、経済産業省や文部科学省の担当官が加わり JCO 事故以降に取り組んできた国等の原子力防災対策の取組みを紹介した。 JCO 事故から1年を経た総括の議論は、原水爆禁止日本国民会議と原子力資料情報室による「JCO 臨界事故総合評価会議」の要請に応えたもので、鳥井弘之日経新聞論説委員がコーディネータ役をつとめて議論が進められた。 このなかで評価会議は独自にとりまとめた報告にもとづき、安全委員会の調査報告に関して「3か月という期間で拙速に取りまとめられたもので不十分な内容」と指摘。また事故を起した JCO 施設の許認可を行った際の経緯に関して「直接に事情を聴取するなどして解明すべきだった」とし、当時の安全審査のあり方に対する調査が不十分だとした。 これについて原子力安全委員会は、「何より原因を究明して、迅速に必要な対策を講じることを優先する考え方のもとにとりまとめたもの」などとして、当時として同報告書の内容が、必要な対策を講じるうえで十分に問題点を指摘しており、それにもとづく対策が迅速に打たれてきたことへの理解を求めた。また関係者からの事情聴取などに関しては「行政庁からの調査にもとづき検討した」として直接に事情を聞くことはなかったとしながらも、何よりその時点で再発防止にむけて原因の究明と考えられうる対策の検討に全力をあげたことなどを強調した。また、評価会議は、調査委員会に核燃料サイクル開発機構からの委員が入っていたことに関して「サイクル機構は JCO に事故を起した試験燃料製造を依頼していた」ことから「準当事者であり、委員会の構成に問題がある」と指摘した。これについて安全委員会側は「専門性などの能力重視で人選したもの」とする一方、「その点に関しては、人選などに十分な考慮をする必要がある」との見解を示した。 続いて、防災体制をめぐり、行政庁の担当官も加わり、原子力防災関連の特別措置法の成立に基づくオフサイトセンター設置など、全国展開する関連防災体制についての説明が行われた。また安全委員会で検討中の緊急被ばく医療体制の検討状況についても「全国規模での医療ネットワークがほぼできあがりつつある」などの説明が行われた。 こうした体制の整備に関して、会場から「従来の防災法の考え方とあまり変わっていない。中央集権的だ。むしろ地方が迅速に動けるようにすべきではないか」とする問いかけについて、説明にあたった経済産業省は「地元の方々が事情を把握して対応できる内容であり、その動きを妨げるものではない。求めに応じて国は助言等を行う体制としている」などと答えた。また浜岡からの参加者が、東海地域の地震などへの対応をただしたのに対し、原子力安全委員会は「責任は十分に感じており、常に情報を収集している」とした。また経済産業省も、必要な情報の収集を常に行っていること、また基本設計で十分な耐震安全性を確認し、万一の際の輸送ラインの確保などについても災害関連法に則して対応をとるなどの説明を行った。 委員会の終了後、会見した松浦祥次郎原子力安全委員会委員長は、「よかったことは、厳しい意見も頂戴したことで、今後十分に参考にさせていただきたい」と第2回目の地方開催を評価した。また、今後も「できうる限り開催していきたい」とした。 |