[原子力産業新聞] 2001年3月22日 第2080号 <4面> |
[サイクル機構] 幌延での深地層研究計画の概要3段階に分けて実施へ既報のとおり、核燃料サイクル開発機構は北海道幌延町で実施する予定の深地層研究計画をこのほど幌延町など地元に説明した。計画では3段階にわけ20年間にわたる調査研究を実施する方針だ。透明性を確保し、国民の理解を得ながら高レベル放射性廃棄物処分技術の確立をめざす。今号でその説明資料などから、研究計画の概要を紹介する。 計画の概要 「幌延町における深地層の研究に関する協定書」第8条に従い、幌延町における深地層研究所 (仮称) 計画 (以下、「本計画」という。) の第1段階の地表から行う調査研究計画、2000年度調査研究計画等について報告する。 本計画は、地層処分の技術的な信頼性を実際の深地層での試験研究を通じて確認すること、一般の人々に深地層やそこでの研究を実際に見て体験してもらう場として整備することを目的としている。 得られた成果は、岐阜県の東濃地科学センターにおける地層科学研究の成果とともに、茨城県の東海事業所で行っている地層処分研究開発や国際共同研究の成果と合わせて、実施主体が行う処分事業や国が行う安全規制などに反映していく。 本計画は、以下の3段階に分け、全体で20年程度行う。 ・第1段階 地表から行う調査研究 (6年間) なお、各段階は一部重複する。 1.地表から行う調査研究 (第1段階) 計画本計画で行う研究開発の課題と実施内容は次のとおりだ。第1段階の地表から行う調査研究は、2000年度末から2005年度までの約6年間を予定している。 ▽研究所設置地区の選定 第1段階の初期 (2000年度末〜2001年度) に行う文献調査、空中物理探査、地上物理探査、地質調査、試錐調査などの結果に基づいて深地層研究所設置地区を選定する。深地層研究所は、500m以深を目途に地下施設を設置することにしており、設置地区の選定にあたっては、研究の対象となる地層が500m程度の深さに十分な広がりと厚さを持って分布し、さらに安全に地下施設を建設でき、研究環境を確保できることが重要な要件になる。なお、施設の建設に必要な用地の確保や効率の観点からは、土地利用状況等社会的な側面も重要な判断要件となる。 ▽研究開発課題 「地層科学研究」(1) 地質環境調査技術開発深地層研究所設置地区およびその周辺において、地表から地下深部までの地質環境が調査・把握できることを具体的に示すとともに、地下施設の建設に伴う地質環境の変化を予測する。 この予測結果は、第2段階の「坑道を掘削しながら行う調査研究」で取得する実測データによって確認することにより、地表からの調査技術を検証する。 第1段階に現地で行う作業としては、空中物理探査、地上物理探査、地質調査、表層水理調査及び試錐調査を行う。 (2) 地質環境モニタリング技術の開発 モニタリング機器の開発・設置により観測を開始し、地下施設建設前の地質環境データの初期値を取得する。 (3) 地質環境の長期安定性に関する研究 幌延町の地質条件に着目し、地震・断層、隆起・沈降・侵食等の天然現象の過去および現在における活動に関する情報の取得と整理を行う。 (4) 深地層における工学的技術の基礎の開発 坑道掘削による岩盤への影響の修復技術に関する試験などの基本計画を策定する。また、第2段階から建設を始める地下施設の設計を行う。 「地層処分研究開発」(5) 人工バリア等の工学技術の検証 第2段階以降に地下施設で行う定置試験計画を策定するため、緩衝材の定置の精度がオーバーパックの腐食や緩衝材の性能に与える影響を把握する室内試験などを行う。 (6) 地層処分場の詳細設計手法の開発 第2段階以降の地下施設におけるセメント影響試験等の基本計画を策定するため、試験の最適条件の把握や現象を予測する手法を検証するための室内試験を行うとともに、海外の地下研究施設での研究事例を調査する。 (7) 安全評価手法の信頼性向上 シナリオ開発手法、人工バリア、天然バリア、生物圏それぞれの安全評価モデルの試験的適用を通じて、安全評価に必要なデータの取得手法の検討を行う。 ▽環境調査・地上施設 (1) 環境調査 環境への影響を未然に防止する観点から、自主的に環境調査を行う。幌延町の自然的状況や社会的状況を把握するために、文献・聞き取り調査と合せて、希少動植物の存在の確認や地下水の利用状況を調査する。 (2) 地上施設 地上施設として、研究管理棟、コア倉庫棟、ワークショップ棟などを建設する予定だ。基本設計は2001年度から開始する。 2.2000年度調査研究計画第1段階の地表からの調査研究の初年度である2000年度は、2001年度に行う現地調査の準備作業等を行う。 ▽設置地区の選定 深地層研究所は、地下施設を500m以深を目途に設置することとしており、2000年度は既存資料に基づき、研究の対象となる地層が500m程度の深さに十分な広がりと厚さをもって分布する深地層研究所設置対象区域を抽出する。また、調査研究の効率的実施の観点から、土地利用状況等社会的な側面についても検討を加える。 ▽研究開発課題 (1) 地質環境調査技術開発空中物理探査、地上物理探査、地質調査の調査仕様や調査範囲の検討など、調査のための準備を行う。雨水が地下にしみ込む量を調べるための、適正な観測手法・機器を検討するために、幌延町全域の降雨状況などの表層水理に関する文献調査の準備を行う。 地下水の流れ方などを明らかにする数値解析のために必要な解析条件の設定方法や、既存のモデル化手法の選定などの準備を行う。 (2) 地質環境モニタリング技術の開発 堆積岩地域の試錐孔を用いて行う観測の方法や、機器の材質、耐久性などについての文献調査の準備を行う。地震波を用いた遠隔監視システムの受信機 (記録計) の改良の準備を行う。 (3) 地質環境の長期安定性に関する研究 既存の文献情報などに基づき、地震観測や地下水観測計画、隆起・沈降や火山などに関する研究内容についての検討の準備を行う。 (4) 人工バリア等の工学技術の検証 地下施設で行う試験計画を検討するため、人工バリアの定置装置に求められる精度について、類似技術の調査や東海事業所などの試験施設を用いた室内試験の準備を行う。 (5) 地層処分場の詳細設計手法の開発 地下施設で行う試験計画を検討するため、新しいコンクリート材料に関して鉄筋などの腐食がもたらす強度の変化などを、東海事業所などの試験施設を用いた室内試験や、海外の地下研究施設での研究事例についての文献調査の準備を行う。 (6) 安全評価手法の信頼性向上 既存の文献情報に基づいて、安全評価上重要な項目や課題の抽出を行う。 ▽環境調査 希少動植物の生息状況や地下水の利用状況などを把握するために、文献調査・聞き取り調査を行う。 3.その他現地事務所についは、長期間閉鎖しており補修が必要なことから、3月3日から3週間程度をかけて補修工事を行い、終了次第、4月から新事務所として使用するための諸準備を行う。 |