[原子力産業新聞] 2001年3月29日 第2081号 <4面>

[無機材研] 放射光使い世界最高のX線ビーム

ナノレベル解析に道

文部科学省無機材質研究所はこのほど、大型放射光施設 SPring-8 にある専用のビームラインを利用して、高価格のミラーを使わずにこれまでより簡単に世界最高レベルの精度をもったエックス線ビームを取り出すことに成功した。

物質・材料の分野で重要な基礎研究となる物質の原子配列を解析するのにエックス線の利用は有力な方法だが、将来的にナノレベルでの超微細な構造解析を行うには、高精度で大きい強度の単色光が必要となってくる。

従来、単色光を取り出すためには高価な特殊ミラーを組み合わせた結晶分光器によって特定の波長の光を取り出すやり方が採用されてきている。こうしたミラーは1台あたり2,000万〜3,000万円程度で、ビームラインにより複数が必要であることに加え、1つの波長を調整するのに数時間をかけなければならなかった。

無機材質研究所が開発した方法は、SPring-8 に設置した専用のビームラインにある分光器システムに改良を加えたもの。放射光から特定の波長を取り出すためには結晶が用いられるが、分光器中にある2枚の結晶面の間隔を従来より広く取ることで、結晶面での波長の違いによる屈折効果の差などを利用して世界最高水準の精度で単色光ビームとほぼ同等のビームを得ることができ、実験装置にすぐ導入することが可能になったという。

今回の成功により、高価なミラーを必要とせず波長の調整時間も短縮できることに加え、ビームを取り出す際に生じる光強度の低下を最小限にできるため、ナノ領域の解析に必要な光の強度を確保する見通しが得られた。今後、微細加工や先端物質研究のほかライフサイエンスの研究などにも大きく貢献するものと期待されている。


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