[原子力産業新聞] 2001年4月5日 第2082号 <3面>

[米国] エネ省長官、エネ危機発生を警告

長期的な対策を策定へ

米国エネルギー省 (DOE) のS.エイブラハム長官は3月19日、「今後20年間に米国は大規模なエネルギー危機に直面する恐れがある」と警告するとともに、その対策としてブッシュ政権が国家エネルギー政策の策定に取り組んでいることを明らかにした。

これは商工会議所の国家エネルギー・サミットで述べられた。同長官はまず、クリントン前政権時代の過去8年間を振り返り、エネ需要に対する課税や供給の制限、需要の急速な拡大が傍観されたことなどを指摘。米国は天然資源に恵まれているにも拘わらず、1月にカリフォルニア州で電力供給が不足するという事態に陥ったのは前政権の怠慢に責任があると非難した。同長官は今後20年間にエネルギー危機が確実に起こることを予想させる重要な事実として次の3点を指摘している。すなわち、(1) あらゆる方面でエネルギーの需要−特に天然ガスと電力の需要が増大 (2) 技術の進歩に歩調を合わせられない規制体制や絶対的に必要な施設への投資を渋る不安定な政治環境などがエネ供給を制限していたこと (3) 電源ネットワークや送電網、燃料の精製施設や輸送設備といったエネルギー・インフラが非常に老朽化しており、将来の需要を満たすには不適切−など。これらの問題点に取り組まない限り米国のエネ供給は今後もリスクに晒され続けるだけでなく、国民は停電や生活スタイルの変更に関わる混乱に遭遇。米国経済はエネルギー価格の上昇のために身動きが取れなくなることも考えられると指摘した。

DOE では今後20年間に米国の一般家庭や産業で使う電力量は45%増加すると見積もっており、十分な電力を確保するためには新たに1,300の発電所、年間にして約65の発電所が必要と予測。しかし、90年代にはエネルギー多消費型の情報経済の発展によって電力消費量が予想をはるかに上回り、インターネットによる消費だけですでに8〜13%を占めると指摘する専門家がいることを考え合わせると、この数字はまだまだ保守的だと言える。同長官によれば、過去10年と同じペースで需要が増えつづければ、米国では2020年までに1,900の新規発電所 (年間90以上) が必要になると予想されている。

今後の主力電源について同長官は温室効果ガスの排出量を少なくなるよう改善された石炭火力を挙げたが、原子力に関しても石炭と同様、将来像が不透明な電源だと指摘している。

このような状況を踏まえた上でエイブラハム長官は、ブッシュ政権では長期的な国家エネルギー政策を緊急に策定する必要があるとの認識から、チェイニー副大統領をリーダーとするエネルギー特別作業班を設置したことを伝えている。同班では主に、環境保全に責任の持てるエネルギー源の探査や米国独自のエネルギー源の復活、省エネ対策とエネ効率の促進、再生可能エネルギーなど新技術への投資拡大などを可能にする明確な戦略の策定を目指す。


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