[原子力産業新聞] 2001年4月19日 第2084号 <1面>

[総合エネ調] 需給シナリオを総合的検討

総合資源エネルギー調査会の総合部会・需給部会が17日に合同会合を開催し、各部会から検討状況の中間報告を聞き審議を行った。省エネ部会からは2010年度時点の省エネ効果が、現行政策目標とほぼ同じ水準の計5,700万キロリットルと報告され、新エネ部会からも2010年度時点で供給サイドの目標量を1,910万キロリットルという最大限努力しても、現行政策目標並みの導入にとどまる見通しが示された。原子力部会からは「現時点では、原子力エネルギーを基軸エネルギー源とする上で必要な安全基盤は確保されている」一方、「安全の追求に終着駅はない」などととして、安全の維持向上に取り組む必要性が示された。


原子力部会 「安全性の維持向上を」

この日行われた各部会からの中間報告のうち、原子力部会からは、原子力の技術基盤の充実・強化についての論点が報告された。民間の事業として定着している分野、事業化の途上にある分野、今後研究開発が必要な分野に分けて官民の役割を整理するとともに、各事業分野の横断的な問題として規制体制の整備、防災対策や保安面など安全確保に関する体制・機能強化を求めている。また「現時点では、原子力エネルギーを基軸エネルギー源とする上で必要な安全基盤は確保されている」としながらも「安全の追求に終着駅はない」として、安全の維持向上に取り組む必要性を強鯛。このほか、安全研究の積極的な取り組みや、技術伝承などにむけた人材確保を課題にあげた。

そのうえで、横断的な安全確保課題 (リスク管理、品質保証ほか科学等)、高レベル廃棄物処分や MOX 燃料再処理などの研究開発に国の主体的取り組みを求め、それに必要な人材、予算確保を担保し、研究活動で生じる廃棄物処分に対する費用等への対応明確化が必要としている。また、高い倫理観を求められる技術者の養成という観点から大学教育の充実を含めた人材確保の重要性も示した。

また、省エネルギー部会からは産業部門や運輸、民生など各部門の省エネ対策効果を従来から100万キロリットル上積みした合計5,700万キロリットルとの見込みが示され、「国民生活や企業活動に何らかの制約を課すような対策に踏み込んでいかざるを得ない」と厳しい見方が報告された。

新エネルギー部会からは官民によりコスト低減努力や導入促進にむけての最大限の努力を前提に、2010年度時点で供給サイドの目標量を1,910万キロリットルとする報告がなされ、最大限努力しても現行の需給見通しに示された導入目標と同じレベルになるとの試算が示された。

エネルギーセキュリティ・ワーキンググループからは、エネルギー確保にあたっての供給地域から輸送経路などのリスクや価格面のリスクなどに対応するために情報収集・分析評価体制を強化、また価格高騰などのリスクを抱える石油の調達先多様化、産油国との関係強化などが必要と報告された。また原子力などの石油代替エネルギー開発が「重要な選択肢」であると位置づけている。

天然ガスに関しては、石油からの転換をはかっていくべきとの考え方が示され、米国や英国など OECD 全体で21% (1次エネルギーべース) の利用規模であるのに対し、日本は1999年度で13%となっており、これを OECD 並みに引き上げた場合についてこれから具体的に検討していく状況という。利用拡大にあたっては、供給先の多様化やコスト面での削減努力の必要性を示した。

またこの日、総合資源エネ調が初の試みとして、地球環境問題を考える市民団体などから低成長や脱原子力を前提とするエネルギーシナリオを聞いた。

今後、総合資源エネ調は、こうした様々なシナリオを参考にしながら、7月開催の COP6 再開会合を視野に、2010年度までのエネルギー政策パッケージである目標ケースとりまとめを急ぐ方針。


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