[原子力産業新聞] 2001年4月26日 第2085号 <1面> |
[原産] 第34回原産年次大会が開幕「21世紀の原子力」テーマに日本原子力産業会議の第34回原産年次大会が24日から27日の日程で、10か国・地域より1,470名が参加し、青森市文化会館で開幕した。今大会は、「21世紀の原子力−地球、エネルギー、環境保の保全のために」を基調テーマとして掲げ、原子燃料サイクル施設が操業・建設中であるほか原子力発電所の新規立地が進む青森県で開かれる大会として多くの注目を集める中での開催となった。26日には、大会会場を六ヶ所村に移し、サイクル事業と地域との共生について、地元住民らを交えて考える。 初日、吉田豊大会準備委員長は開会挨拶し、人類が地球環境に与える負荷は増大し、温暖化などの生態系への影響が懸念される、人類の福祉や経済発展とならんで温暖化ガス排出量の削減により気候変動を食い止めることが今世紀最大の課題だと指摘した。 また、西澤潤一原産会長が所信を表明、前世紀に科学の力が多くの分野でプラスの遺産を残した反面、技術に伴う倫理の問題や地球環境の悪化、エネルギー利用における格差が生じたとして、「科学と自然が共存できる社会を創り出すことが今世紀の命題」だと訴えた。また原子力は地球環境の持続的保全とともにエネルギー資源からの制約を断ち切ることができると述べるとともに、ウラン資源を有効にプルトニウム利用することは、我が国の原子力開発の使命であるとあらためて強調した。 引き続き、藤家洋一原子力委員長が所感を述べ、新長期計画の中で「核燃料サイクルの確立を図りつつ、原子力発電を基幹電源として最大限に活用することが不可欠であることが確認された」としたうえで、「新しい原子力委員会が具体的に行動していくにあたり、原子力委員は、いかなる政策も国民や社会の理解と協力なしには進められないことを肝に銘じ、議論を進めていくことが重要」として、国内外を問わず対話を促進する姿勢を示した。 青江茂文部科学省文部科学審議官は町村信孝文部科学大臣所感を代読し、「核燃料サイクルの確立は短期的観点からのコストや燃料資源のバランスを超えて長期的で全地球的に重要な意義を有する」と指摘。スケジュールに沿い着実にサイクル施設の建設・運転が行われるよう最善の努力を傾ける必要があるとした。 河野博文資源エネルギー庁長官は挨拶の中で、現在焦点となっているプルサーマル計画に触れ、福島県や新潟県などでの実施が困難な情勢にあることは事実だとしたうえで、先ごろの原子力委員会や電気事業連合会での新たな決意表明などが計画の早期実現に向けての頼もしい動きだとして、経済産業省としても、揺るぎない国の方針としてプルサーマルの推進に全力を挙げて取り組むとした。 開会セッション「特別講演」の部で木村守男青森県知事は、「原子力開発と地域発展」をテーマに、エネルギーの安定供給が重要との基本認識を示し、温室効果ガス排出量削減目標を達成するためには「原子力発電の役割を抜きにしては語れないという現実がある」と強調した。同知事は一方で、「度重なる原子力施設の事故などにより、県民の間に原子力の安全性に対する不安や不信が募り、それがいまだに払拭されていない状況だ」と述べ「原子力に対する国民、県民の信頼を得るためには、国や事業者、地方自治体が各々果すべき役割を果し、原子力関係施設で安全運転の実績を積み重ねていくことが重要」と指摘した。そのうえで、国は責任をもって原子力政策を着実に推進すべきとの見解を示し、国のエネルギー問題について、総合的で長期的なビジョンを早期に策定する必要性があることを強調した。 このあと、年次大会は2日目の六ヶ所村での開催をはさみ、27日までの3日間、6つのセッションを開いて環境問題と原子力、サイクル事業と地域との共生、高レベル廃棄物問題−などをとりあげ、市民を交えて広範な議論を展開する。 |