[原子力産業新聞] 2001年5月10日 第2086号 <2面> |
[原子力委員会] 国際的賠償制度で本格調査へ2条約締結是非めぐり検討会原子力委員会は8日、我が国の原子力損害賠償に関する国際条約締結の是非をめぐる本格的な検討にむけ、詳細な調査を実施する方針を固めた。 昨年度は科学技術庁が、こうした検討の予備的段階として、核燃料の国際輸送に関する損害賠償や国内賠償制度を取り巻く問題点の把握に努めた。前年度の成果を基礎として、より具体的な調査を開始する。 調査検討会は、谷川久成蹊大学名誉教授を主査として8名程度の学識者や弁護士、事業者などで構成される見通し。原子力委員会からは遠藤哲也委員長代理が議論に加わる。検討会では、12月頃までの間に (1) 越境損害被害者の救済 (2) アジアの原子力事情 (3) 国内原子力産業や核燃料の国際輸送など−といった観点から議論し、原子力損害賠償関連の国際条約締結の是非を含め、10月にも原子力委員会に検討結果を報告する予定だという。 現在、原子力損害賠償についての国際的な枠組みにウィーン条約やパリ条約があり、欧米諸国を中心に賠償制度が確立されている。一方、アジア地域ではこれらの条約の加盟国はほとんどない状況。我が国も国内損害賠償法制は存在するが、両条約には入っていない。 今回我が国が条約締結の意義を検討する背貴には、北朝鮮で進む朝鮮半島エネルギー開発機構 (KEDO) の軽水炉建設プロジェクトに関わる問題がある。同プロジェクトの契約では北朝鮮に損害賠償制度の確立が義務づけられている。理事国やメーカーは原子力機器を納入する前に北朝鮮側に損害賠償のメカニズムを確立しておきたいとのねらいがある。こうした環境を整備するためにも我が国や韓国も国際条約に加盟することが必要との議論が高まってきていた。 |