[原子力産業新聞] 2001年5月17日 第2087号 <2面>

[プルサーマル] 実施をめぐって刈羽村で住民投票

今月27日実施へ

東京電力柏崎刈羽原子力発電所3号機でのプルサーマル実施をめぐって、今月27日に新潟県刈羽村で住民投票が行われる。

村の住民からの直接請求に基づく住民投票の実施。今年初め、品田宏夫刈羽村長の再審議要求により一旦は条例案廃案で見送られた住民投票だったが、再度条例制定を求めて有権者の37%に相当する署名が集められたことで、先月18日に村議会臨時議会が開催。住民投票条例案が9対6で可決された。この結果を受けた同村長も今回は再議に付さず、「村の民主主義を守るため」との判断から村民の意思を問う選択をした。


注目される柏崎刈羽3号機は4月17日から88日間の予定で定期検査入り。3月下旬には、同機向けの MOX 燃料体受け入れが終了し、先月18日には国による燃料体検査にも合格している。

ウラン資源の確実なリサイクル利用として以前から準備されるとともに、97年には原子力委員会決定や閣議了解が行われ、全電力規模で取り組むことが合意されたプルサーマル計画。東電が97年3月、同福島第一3号機に続いて柏崎刈羽3号機でのプルサーマル計画を表明して以降、地元で通産省や東電が計画の意義や安全性に関する説明会を数回開催してきた。

99年に明らかになった高浜発電所向けの BNFL 製 MOX 燃料の不正データ問題のあと、国や事業者がそれぞれ再発防止のための取組みを強化した。

国は輸入燃料体検査制度を改善。電気事業法施行規則を改正し、事業者に対して、検査申請書に品質保証に関する説明書の添付を義務づけるとともに、MOX 燃料製造前に検査申請を行い、設備許可取得後に MOX 燃料体製造を行うことを求めることにした。

一方、東京電力も対応を強化。東電向けの MOX 燃料はベルギーのベルゴニュークリア社と FBFC 社によって製造・加工されているが、東電は燃料の品質保証活動を行うなかで、両社に対し、品質管理体制の監査や調査、技術的能力の評価、製造期間中の立会い検査などを実施し、問題のないことを再確認してきた。また客観的な評価を得るため、ベルギー国内の第三者認証機関 AVI からの確認も得ている。

こうした東電による確認結果を踏まえて、柏崎刈羽3号機用 MOX 燃料の品質管理に問題は見られないとの点を含め先月、輸入燃料体検査合格との判断が示された。


今年に入って、福島第一3号機でのプルサーマルも難航している。当事者である電気事業者のほか原子力委員会を始めとして国がプルサーマル実現にむけ、地元に理解や協力を求める働きかけを行う姿勢で率直な話し合いの機会を模索している。

今日、自治体の立場や主張が多様化し、国策として推進されてきた原子力政策との距離が従来の尺度では計りきれなくなってきているようだ。とはいえ、将来の我が国のみならず地球規模でのエネルギーや環境問題を直視したとき、ウラン資源の有効利用を排除してはその解決は極めて困難であり、貴重な資源としてプルトニウムを考えれば、現状に照らして我が国が計面的で透明性のある利用を進めるには、軽水炉での MOX 利用が技術的に問題なく、現実的で効果的な方法である。この点を認めている国民は少なくないだろう。

長年、原子力発電所と共に過ごしてきた刈羽村の村民の間では資源やエネルギー問題への意識は高いに違いない。であればこそ、住民投票にあたり、地域にあって日本全体を見渡した冷静な判断を望みたい。それとともに、原子力関係者は地域住民や国民全体に対する地道な理解活動にたゆまず努力を継続し、プルサーマルが意味するものを訴えていくことが何より重要だと肝に銘じるべきだろう。

今後ますます、地元との信頼関係の維持や意思疎通の継続が不可欠になっていく。


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