[原子力産業新聞] 2001年6月14日 第2091号 <1面>

[原子力安全委員会] 緊急時医療ネットワーク構築を提言

防災関係専門部会改組し、総合的検討引継ぐ

原子力安全委員会は11日、原子力防災の強化の一環として緊急被ばく医療に関する報告をとりまとめた。一昨年発生した JCO 東海事業所での臨界事故を教訓に、実効性ある医療体制と国や地方自治体、事業者などの責任を明確にするとともに、緊急時医療ネットワーク構築を広域展開するよう提言。7日設置が決まった原子力施設等防災専門部会に、この緊急医療対応の考え方の具体化など含めて防災対策の総合的な検討が引き継がれる。一方、経済産業相の諮問機関である総合エネルギー調査会の原子力安全・保安部会に設置された原子力運転管理・防災小委員会が13日に初会合を開き、災害時の情報公開など、防災対策の具体策について検討に着手した。

緊急時の被ばく医療対応については、同委員会の原子力発電所等周辺防災対策専門部会が具体的な検討を進めてきたもので、緊急被ばく医療を「異常事態の発生時に人の健康と命を守る原子力安全のセーフティネット」などと位置づけ、原子力施設等での災害の発生に機動的で実効性ある対応がはかれるよう、情報や人的な面からの医療ネットワークを広域展開し充実させることを求めている。原子力施設近隣の医療機関が行う初期医療から重症患者の専門的医療まで、初期、二次、三次という段階的な医療のあり方を具体的に示しており、重症患者の専門的な医療機関として放射線医学総合研究所を位置づけ、それぞれの段階に応じた具体的な処置や連携のあり方等を示している。そのうえで、国には防災基本計画の各種規定を整備して緊急被ばく医療を含めた原子力防災活動の円滑化、あるいは関連知識の普及や医療機関等に対する研修および連携の強化などを進めるよう求めている。地方公共団体には地域の防災計画やマニュアル整備、必要な資機材の維持・管理、地域の医療関係者や周辺住民への知識普及と防災訓練の実施などを求め、実効性のある医療対応への十分な備えを求めている。


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