[原子力産業新聞] 2001年6月21日 第2092号 <2面> |
[ひゅうまんかうんた] 原子力安全委員会委員 飛岡利明氏「原子力施設の設置者と安全規制との間に適切な緊張感を持ちつづけること。適切というのがキーワードだと思うが、そのための努力を続けていく」と語る。 日本原子力研究所で37年間、入所後から材料試験炉 (JMTR) の設計・建設・運転管理に携わるなど「現場で実地体験を積んできた」。安全研究の面では現在日本で有用な安全評価手法として利用されている「確率論的安全評価手法に先鞭をつけた」研究者のひとりでもある。 原子力施設の設置者としての経験に加え、規制のための基準・規格作りにも携わってきた。いわば規制する側と規制を受ける側の両面にわたる幅広い経験から、その手腕に期待は大きい。自身、「それが武器のひとつ」と語る。 原子力安全確保の要ともなる安全委員に就任して2か月が経った。 「原子力施設というのは安全設計が基本であって、安全性は設計のなかで担保されるべきものだ。但しそれは完全ではありえない。それをカバーするのが人間であり安全文化だと考える」と、安全確保の基本線を見据える。 そのうえで「安全文化を高めるというのは原子力安全委員会として大きな仕事であるので、何らかの格好で現場と対話を続けさせていただきたいと考えている」と、血の通った実効性ある規制のあり方に目をむける。 「現場の方々といろんなコミュニケーションをとることが大切だ。安全というのはある種のリーダーシップが必要だと思うし、それを保持し続けることが重要だ。規制側は設置者が担保している安全というのがどういうレベルで担保されるかについての規範を作り、それが守られていることを確認することが規制の役割だと考える」。 その意味で、今後の課題は多い。 「規制の体系化、最終的には安全目標をどう設定するのか、その答えをわれわれは用意しなければいけない。今までの法体系のなかに安全目標の概念がなかったとは言わないが、本当に国民に理解されるようバランスのとれたものにしていくことが必要だ」と強調する。 「例えば原子力発電所の安全、核燃料サイクル施設の安全、廃棄物の安全が同じレベルの安全性なのかどうか、またそれが要求されるか、これについては、まだ必ずしもきちんとした格好になっていない。そういう意味では規制・基準の体系化を早急に進めることが求められている」と語る。特に、高レベル廃棄物など長期間にわたる安全性の確保に関して、どう監視して管理していくか、時間や安全の質的な問題を含め規制面での課題という。 原子力技術とその安全を支える人材、研究設備等の確保も重要な課題となっている。「人材確保などの問題は深刻だ。予算の制約もあって研究設備に関して陳腐化および老朽化が起こっている面もある。特に技術をどう継承するかが重要だ。何が問題点なのかを感じ取れるような人材の育成が大切」と話す。 学生時代はラグビーでならした。第1回東京都中学大会の準優勝チーム、そのあと新人戦で高等学校の時に優勝するなど活躍。テニスも「本気になって随分取り組んだ」。基本的に「運動は何でも」というスポーツマン。一方で「木彫りが趣味」で大学時代にアルバイトしたほどの腕前。「絵を描くことも大好き」と多才な一面も。 1964年 東京大学工学部原子力工学科卒、日本原子力研究所人所、92年 企画室次長、95年 大洗研究所長、97年から理事。2001年4月から原子力安全委員 (常勤)。 |