[原子力産業新聞] 2001年6月21日 第2092号 <3面>

[IAEA] パナマ事故で予備報告

「システムの取扱いミス」

国際原子力機関 (IAEA) は2日と9日の両日、5月にパナマで発生した被曝事故について、事故原因は放射線治療計画システムの取扱いミスにあったとする予備的な結論を「原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」に基づく各国の連絡当局に通知した。

IAEA がパナマ政府から国立がんセンター (ION) で被曝事故が発生したとの一報を受けたのは5月22日のことで、25日には事後対策支援のため専門家チームを現地に派遣していた。同チームの調査結果は現地調査員の調べとほぼ合致したとしており、死者8名を含む被曝患者28名のうち明らかに過剰被曝が原因で亡くなったと考えられるのは5名と判断。放射線治療に用いられた機器は正常に作動、測定も適切だったが、コンピュータ制御の「治療計画システム」に照射データを打ち込む際、定められた通りの手順を踏まなかったことが過剰被曝の原因になったと結論づけている。

放射線で患部を治療する際、正常な細胞を放射線から遮蔽するために様々な形状のブロックが用いられている。ION が使っていた治療計画システムでは線量分布や照射時間といった1処理ごとの照射データを各遮蔽ブロックについて打ち込んでいたが、治療によっては複数のブロックを使う必要があるため ION では昨年8月以降、複数のブロックのデータを一度に1処理として人力するよう手順を変更。これが照射線量の計算ミスを引き起こし、過度の照射に繋がったとしている。

ただし、使用方法はともかく、同システムのコンピュータからの出力は治療部位や遮蔽ブロックなどについてデータが正しく入力されたことを示していることから、コンピュータ計算のマニュアル・チェックを怠ったことも事故の一因に含まれると IAEA では指摘している。

なお、IAEA は同専門家チームによる調査結果を締約各国の連絡当局を通じて類似のシステムを利用している施設に徹底周知するとともに、それらが適切な品質保証プログラムに従って活用されているかどうかで緊急にチェックを促す必要があると訴えている。同事故に関する詳細や教訓等も可及的速やかに報告書としてまとめる考えだ。


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