[原子力産業新聞] 2001年6月28日 第2093号 <3面> |
[ロシア] チェルノブイリ事故の影響で報告書「メディア報道こそ有害」国際チェルノブイリ・センターが13日に明らかにしたところによると、ロシア政府がこのほどまとめたチェルノブイリ事故後の影響に関する報告書は、結論の中でマス・メディアの報道が同事故の悪影響をことさら誇張していると訴えている。 「チェルノブイリ事故−86年から2001年までのロシアにおける影響排除に関する結果および問題点」と題された46頁の報告書は、ロシア政府内で民間防衛対策、緊急事態対応、農業および厚生を管轄する3省が共同で作成したもの。同報告書はまず、チェルノブイリ事故による汚染地区に住んでいた、もしくは事故処理に携わった数百万人のロシア国民が今なお、直接的、間接的な影響を被っているという事実に言及している。しかし、多くのメディアおよびその他の団体は、実際の事故の程度に関して国際的に合意された科学的な事実を執拗に無視する傾向にあると同報告書は非難。ロシア人科学者達の客観的な見解は、国際放射線防護委員会 (ICRP) や国際原子力機関 (IAEA)、国連保健機関 (WHO)、国連放射線影響科学委員会 (UNSCEAR) などを含む放射線の健康影響に関する分野の専門家から成るすべての国際機関で共有されている点を強調している。 同報告書はまた、「チェルノブイリ事故によって数十万、あるいは数百万もの犠牲書が出たとする無責任な報道が一般市民を混乱させ、事故後の影響を取り除こうとする作業の実質的な障害物になっている」と言明。いくつかのマス・メディアに取り上げられた、被曝した親を持つ子供達の健康影響 (いわゆる遺伝的効果) に関する試算もまた、事実に基づいた根拠とは矛盾している。人々は今でも、現実とはほとんど関連性のない見解に対抗せねばならず、それゆえ、実際の放射線影響よりも甚大な健康被害を被っているのだと報告書は強調した。 報告書はさらに、放射線ファクターに対する過度な注目は化学物質などそのほかのファクターによるリスクの過小評価を招いていると指摘。ロシアにある200近い都市においては、いくつかの有毒な化学物質のうちの1つが年間平均濃度が最大許容レベルを超えているほか、基準値の数十倍という例も記録されている。にも拘わらずこれらの例は放射線ほどの関心を引いておらず、環境への汚染影響に関する扱いがこれほどまでの不平等なのは、化学物質による汚染が突然変異や癌などを引き起こすというリスクが適切に認識されていないことと密接に係わっていると報告書は指摘している。 |