[原子力産業新聞] 2001年7月5日 第2094号 <2面> |
[原子力安全・保安院] 台湾第3原発の事故で反映事項とりまとめ台湾第3原子力発電所で3月18日に発生した全交流電源喪失事故に関して、原子力安全・保安院は台湾の行政院国家科学委員会に置かれた事故調査チーム等の調査結果から、わが国の原子力発電所に安全確保に反映すべき事項をとりまとめ、2日の原子力安全委員会に報告した。 この事故は、塩霧害等の原因で、4つある送電系統がストップして外部電源が喪失、また所内の安全交流電源系統が故障、予備の非常用ディーゼル発電機が起動に失敗して給電不能になったことから、同発電所の1号機の二系統ある主電源母線が同時に電源喪失状態になったもの。2時間後に現場作業員の的確な対応で別途設置されていた第5非常用ディーゼル発電機を起動・併入させて給電を復旧、事態の進展を回避した。 保安院では、今回の事故について、台湾電力の送電系統の不安定さ、塩害等への脆弱さが最も本質的な原因で、これに第3原子力発電所の所内電力系統のサージ電圧 (過電圧) 対策の不足が重なったと考えており、このような観点からわが国の原子力発電所で同様の原因による全交流電源喪失事故の発生は可能性として極めて低いと判断している。ただ一層の安全確保をはかるうえで各発電所での確認事項をあげた。 1つめは、今回の事故で送電系統の不安定さの一因となった送電系統におけるサージ電圧 (過電圧) 対策について、わが国の各発電所ですでに施されている対策を改めて確認すること。2つめは過電圧によって非常用母線につながるしゃ断器が壊れ、同母線が機能を喪失する事態になったことを考え、各発電所の所内のしゃ断器の点検頻度とその内容を確認すること。3つめは改めて非常用ディーゼル発電機の点検頻度とその内容を確認すること。4つめは、台湾第3原子力発電所の事故で、事態の収束を可能とした第5非常用ディーゼル発電機がアクシデントマネジメント対策として設置されていたことを考え、わが国でアクシデントマネジメント対策としてとられている複数設置された非常用発電機の「号機間融通」に関し、その設備対策の実施状況およびこれに対応する「手順書」の整備状況について確認すること。 |