[原子力産業新聞] 2001年7月19日 第2096号 <2面>

[文部科学省] 米国の原子力動向を調査

米政府関係者らと会合

米国のブッシュ政権が5月に発表した国家エネルギー政策を受けて、文部科学省は6月25日から29日にかけて担当官らが訪米して、米政府の原子力関係者、研究施設を訪れ、原子力政策の動向と今後の日米間の原子力協力関係等についての調査を実施。17日の原子力委員会に報告した。

米国原子力協会や米エネルギー省 (DOE) の担当官、マコウスキー、ドメニチ上院議員らの政策スタッフと会合をもって政策動向などを聞いたほか、核融合関係者とも会合をもち、 ITER 計画への米国の復帰等について話し合った。またアルゴンヌウェスト国立研究所を訪問し、米国における核燃料サイクルに関する研究開発の動向を中心に調査を実施した。

原子力政策関係者との会合では、エネルギー政策の内容を評価する一方で、上院勢力の逆転等で今後の具体的な施策立案の難しさを指摘する声があったという。また DOE では国家エネルギー政策を踏まえた実行施策については現在検討が始まったところで、作成に2、3か月を要する見込みで、今後予算を含めて具体的な検討を行うとの話があった。

またエネルギー政策のなかで再処理の重要性が指摘されており、資源有効活用や廃棄物問題の最適化の2つの側面からその重要性が認められたことを評価する声が聞かれた一方、産業界からは経済性への疑問の声もあった。議会としては再処理 (パイロプロセス) の研究計画を承認することになるとの見通しがある一方で、原子力に反対する向きは再処理に強く反対しており、先行き不透明な部分があるとの見通しも示された。

一般の米国民の原子力に対する評価は徐々に好転しつつあり、政府も許認可の更新を推奨するなど変化の兆しがあることや民間でも既存発電所の寿命延長、新型炉 (エクセロン社によるガス炉開発) に興味を持っていることなど、原子力を巡る状況はゆっくりとではあるが好転しつつあるとの見方が示されたという。

核融合関係者との会合では有力上院議員のスタッフらとの会談のなかで、日本側から ITER 計画への早期復帰を望むとの意向を伝えたのに対し、米側からは ITER 計画復帰には、大統領の決断が必要で、トップダウン方式による意思決定の重要性が示された。

アルゴンヌウェスト国立研究所では、関係者から高速炉開発研究を国際協力で行う重要性が示され、日本の「もんじゅ」、「常陽」を活用した高速炉開発への関心と今後の協力姿勢が示された。また近く存続問題に判断が示される FFTF (高速増殖炉試験炉) を活用した先進核燃料サイクルデモンストレーションプログラム (炉心燃料を金属燃料に交換して、同研究所の施設でリサイクルする計画) について、計画を DOE に提案している同研究所に対し、日本側が核燃料サイクルの確立をめざす立場から、計画の重要性を認識。協力を検討する意向を伝えた。

文部科学省では、こうした調査を踏まえ、エネルギー政策の動向を注視しながら、日米間の協力関係の強化にむけた動きを強めていく方針。ITER 計画への早期復帰に関しても引き続き高いレベルでの働きかけを行う必要があるとしている。


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