[原子力産業新聞] 2001年7月26日 第2097号 <2面>

[原研] 核融合発電ブランケット用セラミックス皮膜を開発

トリチウム透過が1000分の1

日本原子力研究所はこのほど、トーカロ株式会社 (中平晃社長) の協力を得て、高温の条件下でトリチウムの透過量を1000分の1に低減できる核融合炉発電ブランケット用セラミックス皮膜の開発に成功したことを明らかにした。

将来の核融合炉において、燃料トリチウムの増殖機能、高温除熱機能、遮へい -- の3つの重要な機能をもつ発電ブランケットでは、トリチウム透過低減対策を行った場合とそうでない場合のトリチウム透過量の比 (透過低減率) を400度cで100分の1以下にすることが要求されている。

ブランケットでは容器内面や発電用除熱冷却管外面に付着する水成分のトリチウムを低減する必要があることから、構造材からのトリチウム透過量をなるべく低くする施工法の開発が求められていた。緻密なうえに高温に対して耐久性のあるセラミックス皮膜をブランケットの容器内面や発電用の除熱用冷却管外面に施す方法として、「蒸着法」「溶射法」「拡散浸透法」が考えられてきたが、十分な条件を満足するものがなかった。

従来の皮膜施工上の制限を取り払うため、原研では1990年度より各種セラミックス皮膜の施工技術を持つトーカロ社の協力を得て、容器内面および細径配管の外面に施工可能なセラミックス皮膜の開発努力を重ねてきた。その結果、酸化クロムを主成分とした緻密なセラミックス皮膜を形成させる「化学緻密化法」の開発に成功したもの。基材寸法が制限されずに容器内面にも皮膜施工が可能で、施工温度が450度cと低温。皮膜内の隙間や空孔などの貫通欠陥を埋める緻密な皮膜を形成できることが特長だ。さらに、酸化クロムにガラス化材を添加することによりトリチウム透過量をより低減することに成功した。

今回開発したセラミックス皮膜は剥離しにくい上、耐熱性に優れており、400度cよりさらに透過しやすくなる600度cでも透過低減率は皮膜がない場合の約1000分の1となり、必要な条件を十分に満足することが明らかになった。

原研では、これによりブランケット内で生産されたトリチウムの有効利用などが可能になるとともに、水素脆化により短期間での定期交換が必要な石油精製プラント配管等へ活用することで、設備の耐用寿命の長期化、稼働率向上等の波及効果が期待できるとしている。


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