[原子力産業新聞] 2001年7月26日 第2097号 <面>

[特集] 東北・下北地域特集(2) 六ヶ所村・下北半島

再処理工場における試験の概要

日本原燃・六ヶ所再処理工場では現在、4月20日から前処理建屋で開始された「通水作動試験」が進められている。今のところ試験の経過は「極めて順調」で、現在は「槽検量試験」を中心に検査が行われているところだ。5月末時点での工事進捗率は68%と、2005年7月の運開に向けて順調なペースで建設が進んでいる再処理工場の近況を、現在の目玉とも言える通水作動試験を中心に報告する。

再処理工場で行う試験の概要

一般に自動車工場、化学工場など大きな施設では、実際の操業を開始する前に、その製品を所定の機能通り、安定して生産できるかを確認するために「試験」を行う。この試験ではいろいろな種類の試験を少しずつ範囲を広げながら、本来の運転に近い状況で最終試験を行うという方法で進められる。とりわけ再処理工場では、ウラン試験以降放射性物質を扱うことになるため、特に安全性の確保に重点を置いて、段階的に試験を行う。

段階的な試験実施の考え方

いきなり使用済み燃料を使ったアクティブ試験を実施すると、機器の手直しや改造が必要となった際に放射性物質を取り除く作業 (除染) が必要となり、手直し改造が難しくなる。このため使い慣れている水・蒸気・空気でまず試験を実施し、水→化学薬品→ウラン→使用済み燃料の順に、より取り扱いに慎重を要する試験へと段階的に行う。

また、このように段階的に試験を行いながら、設備の操作性、保守性、安全性等を確認し、不具合があればそのつど、修正 (改善) して次の試験へとひとつひとつ確かめながら進めていく。

なお、ウラン試験以降の段階では、放射性物質を取り扱うため、作業員の放射線被曝線量の管理を行うとともに、放射性物質を取り扱う区域を「管理区域」に設定して管理を強化する。

試験の内容

〔通水作動試験〕水、蒸気、空気を使って以下のような機能・能力を確認する。

(1) 計測設備の調整 (2) 貯槽類 (タンク) の液位と液量の関係を決める槽検量 (3) モータやかくはん機のような機器の作動確認 (4) ポンプ等の移送機器の流量等の機能・能力の確認 (5) 貯槽類や各機器をつなぐ配管が正しく接続され、系統が有機的に建設されているかの確認等 --。

〔化学試験〕通水作動試験で確認した系統において、再処理工場で実際に使用する硝酸、有機溶媒等の化学薬品を使用し、水だけでは確認できない事項について以下の試験を行う。

(1) 薬品の密度を考慮した計測設備の再調整 (2) 薬品を混合するための機器の調整(3)試験から出る廃液を適切に処理するために廃棄物処理設備の機能・性能の確認等 --。

〔ウラン試験〕実際の使用済み燃料を取り扱う前に極めて放射能の低い天然または劣化ウランを用いて運転することにより、以下の機能・性能の確認および調整を行う。

(1) せん断、溶解、抽出および脱硝等の各工程の機能・性能、処理能力の確認 (2) 計測設備の再調整 (3) 運転に必要なデータの取得 (4) セルを閉鎖した後、最終的な建屋の負圧調整確認および施設全体を統合した試験等 --。

〔アクティブ試験〕原子炉から取り出された使用済み燃料を用いて運転試験を行い、生産性能・安全性能が設計通りであることを確認する。

(1) 核計装設備の調整 (2) 製品であるウランとプルトニウムの生産能力および品質の確認 (3) 放射性廃棄物処理施設の能力と放射性物質の環境への放出量の確認 (4) 放射線遮へい性能の確認 --。

試験の目的

再処理工場の機器は、日本あるいは海外のメーカーの工場で製作され、そこで設計通り作られているかどうか検査が行われ、出荷される。その後、六ヶ所の現場では、これらの機器を接続する工事が行われるが、操業開始前までには機器を結びつけた「系統」が再処理工場全体として設計通り、所定の機能を発揮し、安定かつ安全に運転できるか確認する必要がある。

六ヶ所の再処理工場には、約1万基もの主要な機器がある。再処理工場を操業開始後、安定かつ安全に運転するために、この試験において設備の操作性や保守性も確認し、機器の故障や不具合を操業前までに発見し、調整や手直しなどの必要な措置をとることとしている。また、このような試験を行うことにより、操業開始後には容易に近づいて確認することができない機器、系統でも段階的に性能を確認していくので、運転貝や保守員の技術習得、向上にも大いに効果がある。

試験項目は抜けがないように選定

故障や不貝合を摘出するために実施する試験は、抜けがないように工場の稼働状態 (通常運転、異常、保守) と設備の範囲 (機器単体、系統、全体) を組み合わせ、体系的に実施する。

(1) 通常運転状態での確認、調整 -- 各機器・系統ひとつひとつの試験を実施し、いろいろな機器のデータを取るとともに、操作性も確認しながら、これらを組み合わせて、その範囲を少しずつ広げ、最終的には工場全体を通して機器が性能を発揮するか試験を行う。

(2) 異常状態を模擬した試験 -- 機器の故障などにより、通常状態から外れるような異常状態を模擬し、警報の発報や正常な状態への復帰、あるいは機器が停止するような安全な動作をすること (インターロック) を確認する試験を行う。この場合も、試験の対象範囲を順次広げるとともに、異常 (外乱) の大きさを小さなものから、大きなもの (例えば電源喪失試験) へと段階的に変えて行う。

(3) 保守作業の確認試験 -- 定期的に行う保守作業などを想定して、その作業時に使う工具が適切か、また作業がスムーズに行われるか等を確認する試験を行う。

現在は「槽検量試験」を実施中

現在、前処理建屋で行われている通水作動試験は「槽検量試験」といわれるものが中心だ。これは運転管理上、内部の液量を把握しておく必要のある槽やポットについて、液位計で測定する液位と槽内に注入した純水の量との関係から「液位−容量曲線」というグラフを作成するとともに、同曲線作成後、既知量の純水を対象槽へ注入し、注入後の液位、密度、温度の実測値と、制御盤の指示値との差が、設計値を満足しているかどうかを確認するという試験で、通水作動試験のフェーズの中では、準備段階の試験から一歩踏み出した、本格的試験にあたるとされている。

なお今後の通水作動試験だが、分離および精製建屋で年末の開始が計画されており、2003年1月までには、高レベル廃液ガラス固化建屋を除いた全建屋で試験を終了の予定。2004年度内には全建屋において、次の段階である「ウラン試験」に入ることが計画されている。


下北半島、わが国原子力開発の牽引車に

大間、東電・東通も着々と進行中

下北半島には、東北電力・東通のほか3基の原子力発電所が計画されている。まさに、この地域が21世紀初頭の原子力発電開発の牽引車になろうとしている。

本州の最北端となる大間町に、電源開発が同社としては最初の原子力発電所となる大間発電所を計画中だ。しかも、我が国初の全炉心ウラン・プルトニウム混合酸化物 (MOX) 燃料を装荷する138.5万kW の改良型沸騰水型軽水炉 (ABWR) という点でも注目される。プルトニウムの本格的な利用に向け関係者の期待も大きい。

今年1月、発電所敷地内に一部未解決の土地が残されていることから、その交渉にあてるため当初より計画を1年程度先送り。2003年3月の着工、2008年7月の運転開始が見込まれている。なお、同じく03年には同社自身が完全に民営化されることが決まっている。

さらに東通村では、東北電力と並んで東京電力も新規建設計画を進めている。面積約460万平方メートルの広大な敷地に138.5万kW の改良型沸騰水型軽水炉 (ABWR) を2基建設する計画だ。

今年4月には同1、2号機建設に関わる環境現況調査が開始された。

計画は来年に総合資源エネルギー調査会電源開発分科会への上程を目指していて、順調にいけば2005年度内の建設着工、運転開始は2010年度の予定だ。


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