[原子力産業新聞] 2001年8月2日 第2098号 <1面>

[サイクル機構] ロシアと余剰プル処分で研究協力

震動充填法用いたMOX燃料製造進める

核燃料サイクル開発機構は7月27日、余剰兵器プルトニウム処分に関する国際協力の一環として、ロシアの原子炉科学研究所 (RIAR) と MOX 振動充填 (バイパック) 燃料製造を進めるための共同研究契約を結んだ。両者はこれに基づき、今後2年間で RIAR にある燃料製造施設に改造を加え BN-600 燃焼用の燃料製造・加工を可能にするとともに、機器設計や MOX 燃料製造に関する試運転・試作などで情報の共有を図っていく。

契約書には都甲泰正サイクル機構理事長と RIAR のA.グラチョフ所長が同機構東京事務所で署名した。2003年9月までの契約期間で、金額は420万ドルとなっている。

サイクル機構はロシアの解体核からでた余剰プルトニウムを利用し、振動充填法により MOX 燃料を製造してロシア国内の高速炉 BN-600 で燃焼させる計画をすでに1999年度から実施中。計画は「バイパックオプション」と呼ばれ、3つの段階に分けて実施されている。

バイパック法とは、小さい結晶顆粒状の酸化物を振動させながら直径数ミリメートルから数百ミクロンの粒子を作り燃料ピンに充填していく製造法だ。

99年度から2003年までの "フェーズ0" では、RIAR との間でバイパックオプションの技術的可能性や安全性に関する知見を得るための共同作業が進行中で、BN-600 で余剰プルトニウム20キログラムを使ったバイパック燃料集合体3体の照射試験が順調に行われている。

続く第2段階として、"フェーズ1" で、2004年をめどに、bn-600 の炉心を部分的に MOX 燃料燃焼対応化 (ハイブリッド化) させる。もともと濃縮ウランを燃やしていた燃料約400体のうちおよそ90体程度を MOX 炉心化して、年間0.3トンのプルトニウム処理を目指すもの。

今回の契約に基づいて、RIAR 内に顆粒燃料およびピン製造のためのラインを新設するほか、既存の燃料集合体製造ラインを一部改造し年間50体の BN-600 ハイブリッド炉心用 MOX 燃料集合体の製造・加工を可能にする。

RIAR は密度の高い顆粒燃料製造技術を有しているといわれ、こうした技術を用いて作られたバイパック燃料自体にもペレット燃料と比べ優れた特性があるという。サイクル機構にはバイパック方式に関する十分な技術的知見がないことから、今回の研究で機器設計や製作・据え付け、試運転により、MOX 顆粒製造や燃料ピン製造、集合体製造などに係わる技術情報を得て、進行中の FBR サイクル技術実用化調査戦略研究での検討に反映させたい考えだ。

バイパックオプションの "フェーズ1" には日ロのほか米国が参加。BN-600 の新燃料貯蔵施設など、燃料取扱い周辺の施設整備に加わる予定だという。

バイパックオプションでは、最終的に BN-600 の炉心をすべて MOX 燃料として余剰プルトニウムを処分するが計画されている。G8の協議の中で合意されて、"フェーズ2" として2003年から協力実施が予定されているが、具体的なことは今後の協議に委ねられる。


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