[原子力産業新聞] 2001年8月2日 第2098号 <1面>

[原子力安全委員会] ITER進捗にむけ安全確保で考え方をとりまとめる

原子力安全委員会は6日、国際熱核融合実験炉 (ITER) の安全性に関する論点を整理し、現時点での委員会としての ITER の安全確保に対する考え方をとりまとめた。

同委員会がタスクフォースを設けて ITER の安全確保に向けた課題などの詳細検討を行っていたもの。

委員会はその中で、核融合は核分裂生成物のような高放射性物質を発生しないことや、連鎖反応ではないため核暴走が生じないという特徴があるとしたうえで、実験炉としての不確定要素はあるものの既存の核融合実験施設での実績などから、ITER の安全確保は技術的には可能だとする一方、核分裂炉とは異なる固有の要素として次の点に留意すべきだとしている。

(1) 燃料のトリチウムは放射線安全上の配慮を必要とし、中性子による放射化物の取扱いや放射線漏洩の防止にも適切に対応することが重要。

(2) トリチウムや放射化物、ITER での使用機器の交換の頻度を踏まえ、放射性廃棄物の管理に十分な配慮が重要。ITER でも放射能レベルは低いものの相当量の廃棄物の最終処分が必要となる。

(3) 構造設計や耐震設計にあたって、電磁エネルギーの蓄積や機器の支持構造の特殊性に配慮が必要。

ITER の開発の進捗に合わせ安全の面からも段階的に確認していく事項が生じるとして、水素放電から重水素放電をへてトリチウムを使う放電に至る段階的な運転は安全確認を行う点でも望ましいとの考えを示した。

今後、国際協力プロジェクトとしての ITER の安全確保には参加国相互の十分な意志疎通と明確な責任体制が必要だと指摘。委員会としても、安全規制のあり方に関して必要な検討を行うとの姿勢を強調した。


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