[原子力産業新聞] 2001年8月2日 第2098号 <2面>

[緊急被ばく医療] ヨウ素材投与を本格検討

実施基準明確化へ

原子力安全委員会の原子力防災対策指針が7月11日に改定されたことに伴い、原子力発電所などの事故時の被ばく低減を目的とした取扱いが課題とされてきたヨウ素剤投与の問題について検討が本格化した。

原子力安全委員会被ばく医療分科会のもとに設置されたヨウ素剤検討会が6日、第1回会合を開いてヨウ素剤投与のあり方をめぐる検討作業を開始した。ヨウ素剤投与も含め、緊急被ばく医療の問題は新しい防災指針改定作業にあたっての専門部会でも十分な議論が尽くされず、積み残しのかたちとなっていた。

検討会は大学、研究機関の5名のメンバーで構成され、主査には長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設教授の山下俊一氏が選ばれた。

新しい防災指針には、放射性ヨウ素の異常放出の際、施設周辺住民や従事者が受ける甲状腺被ばくを低減するための医療介入としてヨウ化カリウム製剤の投与について触れられているが、明確な投与の実施方法は確立されていないのが現状だ。この問題を詳細に審議し、緊急被ばく医療体制の実効性を高めようというのがねらい。

会合では今後の検討審議の進め方が話し合われ、海外でのヨウ素剤予防投与事例として TMI 事故やチェルノブイリ事故のケースを検証したうえで、我が国でのヨウ素剤予防投与の必要性について、対象地域や範囲、投与時期、投与方法や効用と副作用 -- の観点から議論を進める。

また、予防投与のための決定基準に関して、環境放射能汚染評価と判断基準や被ばく線量の危険度判定、投与のもたらすリスクとベネフィットのほか、ヨウ素剤の備蓄状況や配布手順などの確立、情報伝達 -- など、行政面での対応のあり方も具体的に検討を加える。

こうした様々な点から議論を進めるが、当面の課題とされるヨウ素剤予防投与の実施体制については9月末にも考え方をまとめる見通しだ。


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