[原子力産業新聞] 2001年8月30日 第2101号 <2面>

[インタビュー] 放射線がん治療、ベトナム事情を聞く

医師2名が来日

ベトナムでは近年、以前の感染症に代わりがん患者が増加していて、その対策が医療面での最重要課題となっているという。

そうした中、ベトナムの対がん放射線医療の中心的役割を果たしている専門家医師2名が、がん研究振興財団と国立がんセンターの招きで7月29日から2週間日本を訪れ、放射線医療の現場を訪問するとともに関係者と意見交換を行った。

今回の訪問の成果や将来展望について、来日したベトナム国立がん病院長のN.B.ドゥック氏とハノイ市立がん病院長 (新設) のL.V.タオ氏の2人に話を聞いた。

日本の協力に期待

ベトナムでは今年1月、政府が国立がん病院に放射線治療装置のライナックを1台導入した。ホーチミンの総合病院にも2台、今年中に設置される予定だが、国内で主に使われている治療設備はコバルト60照射装置で、12台ある中の多くが中古のものだ。こうした設備だけではがん対策が思うようにいかず、患者の10%程度しか治療することができない。

人口7800万人のベトナムに規模の大きながんセンターは現在2か所しかない。そこで全国の総合病院にある腫瘍治療部門の機能を高めることで各地域のがんセンターとしての役割を持たせ、最終的には国内のがん治療ネットワークを構築していく計画が考えられている。ハノイ、ホーチミン、フエの3ヵ所をその中核として整備していきたい。

ベトナムでの対がん医療活動に役立てるために、最新の知見を得るとともに将来の協力関係を探ることを目的に日本を訪れた。今回の訪問ではライナックだけでなく陽子加速器、重粒子加速器など最先端の放射線医療技術を目にすることができた。

また、日本でのこの分野のキーパーソンに会って情報や意見を交換することができ、有意義だった。

今後のがん対策を向上させるためには日本からの協力を強く希望している。情報交換や専門医の交流、共同研究もそうだが、JICA や関係機関を通じた放射線医療装置や器具の供与がベトナムのがん患者の早期診断や治療のためにはぜひとも必要なことだと考える。

今年11月には、ハノイの国立がん病院で胃がんに関する国際会議が開かれる。日本からも専門医に参加してもらい、最新の研究発表があるものと期待している。将来的にはベトナムの若手医師が日本で OJT を受けられることや、日本から専門医師が指導に来てくれるなどして、ベトナムのがん対策が進展することを何よりも望んでいる。


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