[原子力産業新聞] 2001年9月20日 第2104号 <1面> |
[IAEA総会] 緊張続く中、IAEA総会始まるエルバラダイ事務局長再選【ウィーン発17日 喜多特派員】11日に米ニューヨークとワシントンで起こった同時多発テロの余波を受け、普段より警官や警備車両の姿が目立つウィ−ン市内の「オーストリア・センター」で17日、国際原子力機関 (IAEA) の第45回総会が開幕した。 総会では最初に、1分間の黙祷の後、ウィーン少年合唱団が演奏し、テロの犠牲者への哀悼の意を表した。 その後の議事では、IAEA への新規加盟を申請していたユーゴスラビア連邦共和国とボツワナの申請を承認、続いて、エルバラダイ事務局長の再選 (2期目) を承認した。 総括演説に立ったエルバラダイ事務局長は、「IAEA 事務局を代表して、米国民と政府、およびテロ事件に巻き込まれた人々に心からお見舞いを申し上げる」と述べたあと、同氏のこれまでの4年間を振り返り、今後の任期中に果たすべき抱負を述べた。特にこの12か月間に、運転成績の向上、発電コストの低減、運転許認可の60年間への延長等、新たな動きがあったとした上で、今後原子力発電が役割を果たしていくためには、(1) 安全性の確保 (2) 核物質転用防止に効果的な保障措置 (3) 経済的競争力の確保 ---- の3点が重要と述べた。 また現在世界中で、約25の革新的原子炉・核燃料サイクルが開発中であるとし、IAEA としても昨年の総会での決議案に応えて、「革新的原子炉・核燃料サイクル国際プロジェクト (INPRO)」を開始したと紹介した。 このあと初日には米国、日本をはじめとする主要国代表の一般演説が行われた。 最初に演説に立った米エネルギー省 (DOE) のエイブラハム長官は、今回のテロの犠牲になったのは米国民のみならず40か国以上の人々だったと述べるとともに、テロリストはいかなる手段を使っていかなる目標をも攻撃することから、核物質拡散防止と核物質防護を担う IAEA の役割はますます大きくなるとしたあと、世界の安全と平和を守るためにテロ暴力と戦うよう求めたブッシュ大統領のメッセージを代読した。 次に、演説に立った尾身幸次・科学技術政策担当大臣は、テロ事件について「文明社会の安全と平和が暴力によって侵された」と述べ、世界が固く手を携えてテロと戦わなければならないと訴えた。同大臣はまた、エネルギー資源に乏しい我が国の原子力開発とプルトニウム利用の重要性を述べ、平和利用における日本の立場を強調した。 |