[原子力産業新聞] 2001年9月27日 第2105号 <6面>

[理研] 超重水素原子核 5H の存在を確認

中性子過剰核研究に新知見

理化学研究所はこのほど、陽子1個と中性子4個で構成された超重水素原子核 5H が存在することを世界で初めて明らかにした。同研究所 RI ビーム科学研究室のA.コルシェニコフ研究員、谷畑勇夫主任研究員らが中心となり、ロシア、フランスの研究チームと協力して成果を得た。

研究グループでは、不安定な原子核である 6He (陽子2個、中性子4個) を高速で水素 (陽子1個) 標的に照射。その際、放出される陽子2個の放出エネルギーと放出角度を同時に検出し、残りの原子核 (陽子1個、中性子4個) の状態を解析した結果、5H の存在を示す「ピーク」を発見した。また、観測されたピーク幅から、超重水素原子核が10のマイナス21乗秒ほど存在していたという確証が得られた。5H は、原子核名「クイントン (quinton)」、原子名「クインチュウム (quintium)」となるとの見通しだ。

同研究グループによる発見には、5H を高エネルギーで、かつ単純な反応過程を通して生成することができる RI ビーム法が用いられた。具体的には、ロシアのドブナ原子核研究所の加速器 (サイクロトロン) を用い、RI ビームである 6He 原子核 (陽子2個、中性子4個) を発生させ、フランスのガニール研究所が設置した水素標的 (陽子1個) に高速で衝突させた。その結果生じた2He (陽子2個) という共鳴状態を、理研が開発した陽子テレスコープで検出した。

今回、5H の発見によって、まず水素の同位体元素の束縛状態は、3H までであることを確認した。さらに 3H より中性子が多い同位体元素が「共鳴状態」として存在する重要な点を確かめた。束縛状態よりも外にある中性子過剰原子核の発見は、10Heに続いて2例目のこと。

理研の RI ビーム科学研究室では現在、建設中の「RI ビームファクトリー」によって、より重い元素による中性子の存在限界を解明することを計画中だ。

今回の研究成果は、中性子過剰核の存在限界に関する重要なデータを提供することとなり、原子核の性質を理解するうえで大きな一歩となる。


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