[原子力産業新聞] 2001年10月4日 第2106号 <5面>

[住友重機] 国内初、陽子線治療装置を製造・販売へ

高度ながん治療に進展

住友重機械工業 (日納義郎社長) は9月25日、同社新居浜製造所 (愛媛県新居浜市) で、GMP (医療用具の製造管理及び品質管理規則) に適合した医療用具品目として「陽子線治療システム」の製造許可を愛媛県より取得したと発表した。

「陽子線治療システム」は陽子線を利用したがん治療装置で、同社は1998年に国立がんセンター東病院 (千葉県柏市) に納入している。このシステムは臨床試験用だったが、陽子線治療を目的とした専用装置としては国内で初めて設置されたもの。同社は薬事法で定められた医療用具として同システムの製造承認申請を厚生省に行い、今年4月に厚生労働大臣より承認されている。これを受け、陽子線治療システムを製造する新居浜製造所は、医療用具の製造管理や品質管理規定を定めた GMP の適合工場としての製造許可を申請していた。今回愛媛県からも製造許可を取得したことで、同社は「陽子線治療システム」を研究用ではなく医療機器として日本で初めて製造、販売をすることとなった。

陽子線はX線や電子線と異なり、一定の深さで急激にエネルギーを放出して消滅する「ブラッグピーク」と呼ばれる物理特性を有しているため、がん細胞のみに線量を集中して治療することができる。周辺の正常な組織に対する影響を抑えて効果的な治療ができるため、これまで照射が難しい部位についてX線などの放射線治療を避けて手術を選択していたものが、陽子線治療システムを使えば手術せずに治療できるケースが増えると期待されている。すでに欧米の大学、研究施設を中心に世界各地で臨床試験が行なわれており、これまで3万人以上の治療が行われている。海外で陽子線の治療装置が医療機器として認められているのは、FDA (米国食品医薬品局) により昨年承認された米国カリフォルニア州のロマリンダ大学医療センターと今年承認されたマサチューセッツ州のノースイースト陽子線治療センターの2か所。

日本では、放射線医学総合研究所と筑波大学、兵庫県粒子線治療センターで陽子線を含む粒子線治療の臨床試験が実施されている。また、国立がんセンター東病院では、同病院の行う「陽子線による固形がんの治療」が一部に保険診療が認められる高度先進医療に適用されている。


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