[原子力産業新聞] 2001年10月4日 第2106号 <5面> |
[日本原子力研究所] 環境負荷物質について移行予測コードを開発日本原子力研究所はこのほど、事故等により環境中に放出される放射性物質等の土壌、農作物、河川中での動きを解析予測し、防災対策に役立てるため、「環境負荷物質陸域移行予測コード (MOGRA・モグラ)」の基本コードを完成したことを明かにした。 人間の生活圏では、放射性物質等の移行挙動に影響を及ぼすメカニズムは物理的・化学的・生物的に極めて多岐にわたるうえ、生活圏には種々の土地利用形態が混在するため、それぞれの土地での負荷物質の挙動も多種多様だ。MOGRA はこうした条件で、実際の地表面がどのように土地利用されているかを考慮し、種々の環境中での放射性物質の動きを予測する計算コード。 環境中に放出される放射性物質の大気中の広がりを評価し、防災対策に反映するための予測計算システムは、原研で開発されたものが国の緊急時対応システム (SPEEDI) として実際に運用されているが、いったん地面に達した後の放射性物質の動きは複雑なことから、予測手法の確立が望まれていた。 基本コードの開発が終了したことから、今後は、基礎データの整備や数値地図システムとの結合による実用化研究を進める計画。これにより、農作物や河川水などの放射性物質による汚染の程度が的確に予測できるようになり、河川からの飲用水取水制限等の防災対策に寄与することが期待されるとともに、土壌や河川などでの重金属汚染の予測にも利用が可能だという。 MOGRA は、原子力委員会と文部科学省が進める原子力基盤クロスオーバー研究の一環として、原研が京都大学原子炉実験所、放射線医学総合研究所の協力を得て開発していた。 |