[原子力産業新聞] 2001年10月26日 第2109号 <14面>

[原研] 放射性ヨウ素129、迅速な定量化可能に

多重ガンマ線検出法

日本原子力研究所は17日、多重ガンマ線検出法を環境中の放射性ヨウ素129の分析に応用することで、迅速かつ高感度で定量することに成功したと発表した。

原子力事故などで放出される放射性核種のうち、放射能が強く人体に大きな影響を与えるヨウ素 (ヨウ素131、133) は、急速に安定な非放射性物質に変わってしまうため、時間が経過した後での定量は困難となる。一方で、半滅期が1570万年と極めて長いため危険性がほとんどないヨウ素129もヨウ素131、133に対して一定の割合で放出されることから、ヨウ素129を測定することでもヨウ素131等の放射性物質の放出量を推定できるが、ヨウ素129の濃度は一般的に非常に低く、自然放射能からの増加を峻別測定するのは極めて難しいとされ、従来的な測定では複雑な作業に伴う精度の劣化などの問題から、高感度で実用的な新しい定量法が求められていた。

原研が開発を手がけてきた多重ガンマ線検出法は、原子核から同時に放出される2つのガンマ線を複数の検出器で同時に計測する手法。これを用いれば、従来の一台の検出器を使った中性子放射化分析法と比べ、約1000倍の精度で分析が可能だという。原研では、実証試験を重ねた結果、ヨウ素129の自然放射能を定量するために十分な精度と迅速性を備え、照射からガンマ線測定までにかかる時間も従来の数時間から十分オーダーに短縮できるなどの成果を得た。

今回、多重ガンマ線検出法での定量化に成功したことで、原子力事故などにもより有効に対応できるほか、ヨウ素129の長半減期を利用して、幅広い分野で応用が可能となるものと期待される。


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