[原子力産業新聞] 2001年11月1日 第2110号 <4面> |
[原文振] 原子力の日シンポジウム、環境とエネで活発に議論鈴木達治郎氏「エネ政策も構造改革を」日本原子力文化振興財団は10月26日、第38回「原子力の日」記念シンポジウムを東京・銀座のヤマハホールで開催した。今回は「地球温暖化、その実態とエネルギー問題」をテーマに、地球環境を考えたエネルギー利用のあり方などについて活発な討議が行われた。 パネル討論に先立ち、主催者を代表して挨拶した大山彰理事長は、地球温暖化と自然災害の関連性に触れ、「地球温暖化は21世紀の人類にとって、その存亡にも関わる重大な間題である」と警告。加えて、温暖化の主たる原因とされる CO2 放出の少ないエネルギー源の需要を増やすことが望まれていると強調したうえで、原子力エネルギー利用の推進については、「国民多数の理解と信頼がなくてはならない」と述べ、(1) 原子力施設の安全実績の積み上げ (2) 放射性廃棄物の処理処分の安全の確保 (3) プルトニウムの平和利用の透明性 (4) 的確な情報公開 − 等の必要性を指摘した。 パネル討論では、千葉商科大助教授の宮崎緑氏をコーディネーターに、科学技術ジャーナリストの尾崎正直氏、鈴木達治郎電中研上席研究員、村山貢司日本気象協会気象情報部専任主任技師、評論家の金美齢氏、漫画家のヒサクニヒコ氏がパネリストとして出席した。 その中で、村山氏は地球温暖化の影響について、「気温が何度上昇するかが問題ではなく、大幅な気候変動が問題である」と強調したうえで、日本の場合は食料問題になって現れるとの見方を提示。また尾崎氏は、米国が京都議定書に反対している理由として、途上国が削減義務を負っていないのは不公平だと主張していることについて、「確かに多くの人口を抱える中国、インドの存在を抜きにして考えられないが、先進国が率先して削減しなくてはならない」と述べるとともに、「両国に自主的に CO2 排出削減を促すことが重要」として、公害対策や省エネに実績のある日本がアジアにおいて、同分野でリーダーシップをとるべきだと主張した。 これに対して、台湾総統府国策顧問でもある金氏は、台湾の龍門原発計画の可否を巡る混乱を例に挙げ、「環境問題では政治問題にしないよう、専門家による客観的判断を尊重すべきだ」と述べた。 鈴木氏も、「エネルギー政策も構造改革が必要である」と主張するとともに、エネルギー問題においても世界規模で民主的に解決していくことの重要性を訴えた。 |