[原子力産業新聞] 2001年11月22日 第2113号 <1面>

[海山町] 住民投票、原子力誘致に届かず

町の活性化、他の道さぐる

原子力発電所の誘致をめぐって住民の意思を問う三重県海山町の住民投票が18日に実施された。電力会社が具体的計画を立てる前に賛否を問う初の投票として全国的にも注目を集めた投票は、即日開票の結果、投票総数7754票のうち反対5215票、賛成2512票、無効27票で、反対票が過半数を上回った。

投票率88.64%が示すように、町の活性化を目指した原子力発電所誘致は同町民にとり極めて関心の高い問題だった。中部電力が立地を計画していた芦浜原子力発電所をめぐっては地元の南島町と紀勢町との間での対立が長年にわたり続いていたことから、北川知事の判断にそって中部電力が昨年2月に計画を白紙に戻したが、この地域では以前から、芦浜以外に海山町大白、紀伊長島町城ノ浜が計画候補地と挙げられていた。その後、芦浜のかげに隠れていた形だが、海山町への誘致の議論には約40年の歴史があった。

その間、雇用の場の縮小など過疎化・高齢化の影響が深刻化する海山町が活性化対策に真剣に取り組む中で、推進派は原子力発電所誘致で現状打開を図ろうとした。海山町商工会 (植村馨一会長) と豊かな海山をつくる会 (藤村達司委員長) が中心になり、発電所誘致に向けた署名活動を展開し、住民の約64%の署名を得て今年2月に議会に請願。議会特別委員会の審議や9月本会議での条例案可決を経て、今月18日の投票実施を迎えた。誘致賛成派は目立った活動を控え、得票に対して楽観的な見方をしていたとの向きもある。

同日午後10時30分頃、反対票が2倍以上という予想外の大差が確定した後、塩谷龍生町長は記者会見に臨んだ。誘致に賛同していた町長は「結果を厳粛に受け止める」とし、町議会が出す判断を待つとしながらも、「これで町への原発誘致の議論は終わることになるだろう」と淡々と語り、浜岡発電所での配管破断や米国でのテロ事件が賛成票の伸びに影響したと分析。そのうえで、原子力発電所に頼らない以上、「覚悟して町の他の活性化の道を模索しなければならない」と語り、固い表情を崩さなかった。

中部電力の川口文夫社長は、投票の結果について「期待していたが、誠に残念な結末だった。町議会でのこれからの審議について見守っていきたい」とのコメントを発表。

一方、平沼赳夫経済産業大臣は20日の会見で、投票結果を残念だったとしたうえで、京都議定書でわが国に課せられた CO2 排出量削減目標の達成という現実に照らし合わせれば「原子力発電の存在価値というものは非常に大きい」と、その必要性をあらためて強調。引き続き、原子力推進に尽力していく方針を示した。


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