[原子力産業新聞] 2001年12月6日 第2115号 <1面>

[FNCA] 持続的発展へ原子力の役割を認識

エネルギー・放射線利用など大臣級会合で活発な議論

近隣アジア地域の原子力平和利用協力の推進を図る枠組みであるアジア原子力協力フォーラム (FNCA) の第2回本会合が11月29日、原子力委員会の主催で東京・港区の高輪プリンスホテルで開かれた。加盟9か国の原子力担当の大臣級参加者らが参加した高級会合では、持続可能な発展に原子力の果たす役割や放射線利用分野の協力などで意見を交換。加盟国が今後もこうした重要な課題を取り上げ、FNCA体制のもとで連携を深めていく必要性が確認された。

CDMと原子力今後も議題に

FNCAは、我が国のほかオーストラリア、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの9か国で構成され、昨年から新体制でより実効的な協力を重視した活動を展開している。今回のFNCAには、張華祝・中国国家原子能機構主任、ラジャサ・インドネシア研究技術相、金榮煥・韓国科学技術相、ロウ・マレーシア科学技術環境相ら各大臣や、副大臣クラスが加盟国を代表して参加した。

会議では藤家洋一原子力委員長に続き、尾身幸次科学技術政策担当大臣が挨拶。「エネルギーの安定供給と地球環境保全を考えると原子力利用は世界全体にとり重要な課題」とするとともに、「多様な放射線利用がもたらすメリットもまた大きい」として、今後も原子力がアジア地域社会の発展に貢献することを期待した。

この日午後には、各国の原子力開発利用の現状紹介に続く円卓討議で「持続可能な発展と原子力」をめぐり活発に議論。その中で、持続的発展における原子力の役割について、エネルギーセキュリティ・環境保全・経済成長の「3E」を達成するうえで重要であるとの考えが、原子力発電国のみならず発電計画を持たない国を含めて加盟国間で共通認識として確認された。

一方、原子力が京都議定書で言うクリーン開発メカニズム (CDM) の対象と認められるべきかどうかといった個々の論点ではマレーシアなどいくつかの国は慎重な姿勢を示した。会議後の会見で、討論の議長をつとめた遠藤哲也原子力委員長代理は「現在、各国間で認識の違いはあるが、前向きに議論を続けていくことで一致した。原子力と CDM の関係でこれほど率直な意見を交わしたことは有意義だった」としたうえで、近隣アジア諸国が持続的成長とエネルギー・原子力の役割で基本的考えを共有している点を広く国際社会に発信していくことも視野に入れるべきと語った。2013年からの第2約束期間での温暖化ガス排出削減に関する COP 交渉が数年後には開始されることから、将来的に FNCAの場で原子力の国際的認知に向けた環境作りを図ることも地域での原子力の健全な発展に重要な意味をもつと言える。

さらに円卓討議では、各国に共通する分野である放射線利用面での協力に関しても意見が交わされ、これまでの実績を踏まえ、農工業や医療、環境改善面での放射線利用促進のため加盟国間の連携が一層大切との認識で一致した。

FNCAはこの後、来年3月のコーディネータ会議を経て、秋に第3回大臣級会合を韓国で開催する予定。


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