[原子力産業新聞] 2001年12月6日 第2115号 <2面> |
[原子力安全・保安院] ふげんの配管の貫通割れ確認トリチウム濃度上昇の原因原子力安全・保安院は、核燃料サイクル開発機構から新型転換炉ふげん (ATR、出力16万5000kW) で今年5月に発生したトラブルの原因調査と対応策について報告を受け、「妥当なもの」との判断を下し11月26日の原子力安全委員会に報告した。 ふげんは今年5月23日に定格出力で運転中のところ、主排気筒のトリチウム濃度の分析値が通常より高い傾向を示していた。通常は、法令に基づく3か月平均濃度規制値よりも数十分の1程度で推移していたかそのときには通常より数倍の値となったもの。サイクル機構では放出源の調査を行い、原子炉格納容器と外周コンクリート壁との間の密閉空間であるアニュラス部において、トリチウム濃度が格納容器のトリチウム濃度の通常値より高いことを確認し、原子炉を停止して調査・点検を実施するとともに対応策を検討してきていた。 先月2日までに同機構がまとめた調査の結果によると、アニュラス部の戻り配管で貫通割れが確認されたという。配管割れ部分の詳細調査の結果、塩素に起因した粒内応力腐食割れの特徴の羽毛状の模様が観察され、破面の先端からは塩素が検出された。 粒内応力腐食割れが生じた原因は、重水中の塩分の管理が十分でなかった試運転当時にヘリウム循環系配管の一部にドレンラインから逆流した比較的高い濃度の塩素を含有する重水が溜まっていたことから、この重水がヘリウムの流れにのってミスト状になって配管各所に持ち込まれ、配管内面に付着し、溜まった重水を蒸発させる目的で設置した配管ヒータ、保温材等により配管内面が乾燥したため、ミスト中の水分が蒸発し、塩分が濃縮して応力腐食割れに至ったことがわかった。 このため、ヘリウム循環系配管のうち、塩化物による応力腐食割れ (SCC) の発生する可能性のある部分について、耐 SCC 性に優れた材料に取り替えるほか、凝縮した水を確実に排出するドレンラインを新たに設けるなどの対策をとることにした。 |