[原子力産業新聞] 2001年12月6日 第2115号 <3面>

[ドイツ] 経済相、政策エネ報告書を公表

温暖化防止対策、「脱原子力と両立せず」

ドイツ連邦政府のW.ミュラー経済相は先月末、政府のエネルギー政策報告書を議会で公表し、「無謀な温室効果ガス削減目標はドイツ経済を損なうだけなく、国のエネルギー供給保障をも危うくする」と結論付けた。

この報告書は社会民主党と緑の党による連立政権内でエネルギー政策に関する見解の相違が大きくなっている点を表面化させており、緑の党からは直ちに激しい非難を浴びた。ミュラー経済相は、今年6月に連邦政府と電力4社が正式署名した「原子力の段階的廃止に関する取決め」を策定した際には政治的に独立の立場で中心的な役割を果たしたが、過去には、「緑の党のかかげる地球温暖化防止と原子力の段階的廃止は結局エネルギー政策の根本的な再評価に繋がり、原子力利用の必要性を喚起するかもしれない」と発言したことがある。

報告書の中で同相は、2020年における温室効果ガスの排出レベルについて2種類のシナリオを提示しているがどちらのシナリオも、ドイツの総発電量で3割以上を占める既存原子炉の大部分を2020年までに閉鎖することが前提条件。現在の政策と市場予測を基にして最も可能性が高いシナリオとして、90年の基本ラインと比べて2020年までに16%の排出量削減が見込まれるとしている。ドイツはすでに90年から99年までの間に約15%の温室効果ガス排出削減に成功しており、欧州連合域内のほかの国々で平均4%増加しているのとは一線を画している。

もう一方のシナリオでは、2020年までに排出量を40%削減するとし、その達成のために必要な方策を示した。この目標値は正式な政府政策として合意されたことはないものの、議会の調査委員会で議論されたことがあり、ミュラー経済相は「この委員会は原子力の段階廃止が及ぼす影響をまったく考慮していない」と指摘していた。

結論として同報告書は、最初のシナリオの削減目標である16%は全体としてドイツ経済にさしたる悪影響もなく達成可能だと強調。ただし、エネルギー生産業者に課す環境税はさらに増やさなくてはならず、総一次エネ消費量に占める天然ガスの割合は21%から28%に増加。ドイツのエネ輸入依存度も60%に上がるとしている。

しかし、2つ目のシナリオの40%削減を実現するには石炭利用の大幅カットという大ナタを振るう必要があり、化石燃料費が大きく跳ね上がり、最初のシナリオに比べ5000億独マルク (28兆3000億円) もの財政負担が予想されると指摘している。


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