[原子力産業新聞] 2001年12月13日 第2116号 <1面>

[原研] HTTRがフル出力達成

核熱利用へ本格運転にめど

日本原子力研究所の高温工学試験研究炉 (HTTR) は、今月7日午前2時30分に定格100%出力である最大熱出力30メガワット (MW) に到達し、世界で初めて850度Cの高温ヘリウムガスを原子炉から取り出すことに成功した。HTTR では今後約2年かけて、効率的な核熱利用の実現に向けガス温度950度Cの取り出しを目指す計画だ。

原研大洗研究所にあり、1998年に初臨界を達成した HTTR は、我が国で初めての被覆粒子燃料・黒鉛減速のヘリウムガス冷却型試験研究炉。99年より出力を上げる試験を行い、今年10月からは最大熱出力である30MW を目指して出力上昇試験が続けられてきていた。

HTTR などの高温ガス炉は1000度近い熱が得られるため、将来有望なエネルギーとして注目を集めている水素の製造などへの直接的な熱利用や、高温ガスタービンによる効率の高い発電への利用が可能とされている。また、燃料の耐久温度の高さや炉心溶融がないといった固有の安全性を備えるとともに経済性も高いとされている。こうした特長に注目して、我が国をはじめ中国や米国、ロシア、南アフリカなど各国で高温ガス炉の研究開発計画が動いている。

HTTR では現在、水素製造システムを接続するための技術開発を目的とする模擬試験にむけ、炉外の試験装置が機能試験を実施中で、今月中にも実際に水素製造を開始する予定になっている。

今回は、原子炉システム中の中間熱交換器を使用しない「単独運転」でのフル出力達成だが、来月には熱交換器を用いた「並列運転」で全出力運転を計画している。

さらに、2003年度にはヘリウムガス温度950度を目指した試験や高度な安全性を実証するための試験の実施を予定。その後、原子炉からの高温のヘリウムガスを利用して水素を製造する本格的な核熱利用の研究を行う。こうした計画は、原子力の電力以外へのエネルギー利用の道を拓くもので、世界的にも注目されている。


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