[原子力産業新聞] 2001年12月13日 第2116号 <4面>

「ニュークリア・エナジー・インサイト」は米原子力エネルギー協会 (NEI) が原子力情報を収集、分析、評価し、それにもとづいて、全米的なコミュニケーションの輪をひろげるために発行しているものです。

[NEI-insight] 完璧な計画で原発セキュリティは万全

発電所員、政府、地元が協力

9月11日、ニューヨーク市、ペンシルバニア州およびワシントンDCでの悲劇的なテロ事件発生を受け、米国の原子力発電所は最高レベルの警戒態勢に入った。一連のテロ攻撃により、様々な産業、特に航空旅客業におけるセキュリティ活動に対する注目が高まったが、原子力発電所のセキュリティも必要に応じて迅速に強化されることが示された。

米国の原子力発電所の高いレベルの警戒態勢−これらは連邦政府によるセキュリティ勧告が出される前から整備されていた−には、警備人員の増強や必要な場所への物理的障壁の設置、発電所や周辺区域のパトロール強化および一般公衆の立入り制限などが含まれている。

エンタジー・ニュークリア・ノースウエスト社が同社のインディアンポイント・エネルギーセンター (ニューヨークから約50マイルのハドソン河岸に位置) で講じた防護対策は、原子力産業界による対応策の好例といえる。世界貿易センターへのテロ攻撃の直後、インディアンポイント原子力発電所の警戒態勢は最高レベルに高められた。

「インディアンポイント原子力発電所は、地元の警察や沿岸警備隊と協力して、この最高レベルの警戒態勢をとった」と同社の広報部長であるラリー・ゴットリーブ氏は語った。「沿岸警備隊はハドソン河にパトロール艇を巡回させて安全区域を設けることでボートがサイトに近づかないようにした」と彼は述べた。このパトロール活動は継続中である。これに加えて、地元および州警察は、セキュリティ強化のためインディアンポイント発電所のセキュリティ・チームと協力している。

「エンタジー社がとった対応は、(連邦捜査局など) 連邦政府機関ばかりでなく、地元および州の警察と原子力産業界の協力の典型的なケースといえる」とゴットリーブ氏は語っている。

一方、3基の原子力発電所を所有するドミニオン・リソーシーズ社も、他の原子力産業と同様、公衆の安全確保のための準備をするとともに、(関係機関との) 協力を行った。「わが社は米原子力規制委員会 (NRC) の勧告が出される前から最高レベルの警戒態勢にある」と同社のリチャード・ズルヒャー氏は強調。さらに、「州、地元および連邦政府機関とともに、公衆の健康と安全を防護するための追加措置を講じてぎた」と指摘している。

テロリストによる原子力施設への攻撃の可能性は低い−原子力施設はあらゆる種類の攻撃に対する防護体制を備えており、航空機による攻撃だけではなく、ハリケーンや竜巻などの自然災害にも十分耐えられる装備が施されているという事実から、テロリストも攻撃対象とすることを思いとどまるだろう。

原子力発電所の原子炉は、厚さ4フィートにも達する鋼鉄と強化コンクリート製の強固な格納容器建屋の中にある。これは人類が建設した建築物の中でも最強のものの1つである。また、各発電所は武装襲撃や破壊工作に対する十分な訓練を重ねた武装した警備員により守られており、事故や破壊活動の際、外部への放射線漏洩を防止するための深層防護設計による多重防護システムを有している。

米連邦捜査局 (FBI) は、これまでも原子力産業界のセキュリティ体制が有効である限り原子力施設がテロリストのターゲットとなる可能性は低いとみている。9月に開催された国際原子力機関 (IAEA) 総会で、モハメド・エルバラダイ事務局長は、原子力発電所が、世界でも最もセキュリティが高く、強固な産業施設であることを忘れてはならない」と述べた。

それにも関わらず、原子力産業界はテロ攻撃に備え、さらなるセキュリティ計画の強化をはかっている。原子力産業界は、NRC の監督の下、模擬訓練も含めてセキュリティ計画の有効性の強化と包括的評価を行おうとしている。

原子力発電所を運転中の電力会社は、放射能漏洩による破壊活動を目的として発電所に侵入しようとする自動小銃や爆弾で武装し、訓練を受けた準軍事組織による襲撃に対する防護能力を持つことを実証しなくてはならない。

侵入者を探知し、テロに対する対処をスピードアップするハイテク監視・通信システムが設置されている。さらに、発電所職員の経歴チェックや施設の特定区域への立入管理の強化および「フィットネス・フォー・デューティ基準」 (特定の業務をそれに応じた職能を有するものしかできないようにすること) などによる所内セキュリティ計画により、「内部」からの破壊活動の脅威も低下している。

原子力産業界と政府は原子力発電所に対する武装襲撃の可能性は低いとみているが、こうしたありそうにもない事態に備えることは、公衆の健康と安全を守るという原子力産業界のコミットメントの一環である。「我々原子力産業界は、原子力発電所およびそこに働く人々と周辺住民の安全性とセキュリティの確保をコミットしている」と米国原子力エネルギー協会 (NEI) のラルフ・ビートル原子力担当副理事長は述べている。

ウィスコンシン州民、新規原発に好意的

最近行われた世論調査によれば、ウィスコンシン州民の3分の2あまりが新規原子力発電所の建設を支持している。また、州民の約半数が「原子力発電所の増設に賛成」と回答している。ウィスコンシン州は新たな電源が必要であるという点について、昨年の夏に開催された同州の教育者、州議会議員および経済人のサミットは意見の一致をみた。ウィスコンシン・マディソン大学のジョン・ウィリー総長は、「なぜ理性ある社会が原子力発電なしに電力供給をしようとするのか私は理解できない」と述べた。

少なくても47%の州民は賛成するだろう。このパーセンテージは、今年の夏、ウィスコンシン政策研究所のためハリス・インターラクティブ社が実施した世論調査の結果、新規電源として原子力発電所の建設に賛成した州民の割合である。

地方レベルでも、グレートラクロスエリアの商工会議所が昨年夏、会員企業と個々の会員を対象に実施した調査で、(新規原子力発電所の建設に対して) 同様の結果が得られている。様々な質問の中でも、商工会議所の会員は新規原子炉の建設に賛成するかどうかについて問われた。

この結果、62%が「ウィスコンシン州への新規原子力発電所の建設に賛成」と回答し、53%が「グレートラクロスエリアヘの建設を支持する」としている。

ウィスコンシン州は、同州東部のキウォーニ、ポイントビーチの2つの原子力発電所により電力の約20%をまかなっている。


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