[原子力産業新聞] 2001年12月13日 第2116号 <6面>

[原研] 核融合成果報告会開く

究極のエネ実現めざし

日本原子力研究所は7日、東京・千代田区で今年度報告会「核融合・人類究極のエネルギーの実現を目指して−ITER 時代の研究開発−」を開催した。

このなかで、那珂研究所の松田慎三郎所長は「人類究極のエネルギーの実現を目指して」と題して講演した。化石燃料エネルギーの大量消費により発生する CO2 等による地球温暖化問題が深刻化する見通しを示しながら、「ITER を今建設すれば、21世紀後半の環境制約の中でエネルギー需要に対して核融合炉の参入を間に合わせることができる」として、環境保全性が高く原理的に安全な核融合を将来の大規模エネルギー需要に対応できるよう推進する必要性を強調した。

この日の特別講演では、京大名誉教授で甲南大学教授の佐藤文隆氏が「核融合と宇宙」について話した。佐藤教授はその中で元素とエネルギーをめぐる宇宙の仕組みに関して持論を展開。「星の光は元素製造の排熱であり、元素はエネルギー生成の廃棄物である。原子力発電で用いられるウランの中に核分裂するエネルギーを詰め込んだのは星の重力崩壊だった」とする一方、「太陽のエネルギーが核融合反応でできるとするならば、自然エネルギーと呼ばれる太陽光や風力も核融合が源にある」と強調した。

報告会ではこのほか、核融合炉ブランケット開発分野において中性子を増加させる材料やトリチウム生産材料を大量に作るための材料技術や照射技術、超高温プラズマ分野に関して磁場の乱れの抑制技術、また核融合材料の分野では低放射化フェライト鋼開発など、今年原研によって得られた研究成果が紹介された。


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