[原子力産業新聞] 2002年1月7日 第2118号 <1面>

[ITER計画] 総合科技会議議員、ITER誘致意義ありと判断

最終判断にむけて「考え方」まとめ提出

尾身幸次科学技術政策担当大臣と総合科学技術会議有識者議員は、国際熱核融合実験炉 (ITER) 計画の国内誘致の意義は大きいとする「ITER 計画に対する考え方」をまとめ、12月25日に開かれた総合科学技術会議 (議長・小泉純一郎首相) の本会議に提出した。これを受け、同会議では ITER 計画について意見が交わされ、今月東京で行われる ITER 政府間公式協議もにらみながら、総合科学技術会議としての最終判断を次回以降の本会議で行うことになった。

総合科学技術会議は、原子力委員会が「ITER 国内誘致を念頭に必要な判断を示していく」との方針を打ち出した昨年6月以降、尾身大臣と有識者議員を中心に ITER 計画への参加と国内誘致に対して積極的な議論を重ねてきた。同年最後の本会議を1つのめどとしてこれまでの検討結果を基に同大臣らの考えを文書の形にしたもの。

それによると、ITER 計画は将来の核融合発電の実現性を確かめる研究開発として現時点で最も可能性の高い選択と考えられるとし、「ITER 計画を誘致した場合は、核融合研究の世界的な拠点が国内に形成される。参加のみの場合と比べ、より多くの技術蓄積と人材育成が期待されることから、将来の核融合発電への基盤形成が加速される」と評価した。

一方で、国内誘致に伴う費用負担増や安全確保などに責任を負う必要が生じる点を挙げながらも、将来的に「我が国が核融合発電で主導的立場に立とうとするならば、誘致することによる効果は非常に大きい」としている。

ITER 計画に参加・誘致するための経費については、「第2期科学技術基本計画に示された科学技術関係経費を拡充する中で、原子力分野の範囲内で確保が可能と見込まれる」とし、文部科学省は他の重要分野に影響を及ぼさないよう責任を持って予算措置すべきとの考えを示した。

さらに、今回の「考え方」では、政府が ITER 誘致を考慮した上で政府間協議を進めるべきだとした。その中で国益を損なうことのないよう最善の努力を尽くすとともに、国民理解とあわせ、総合的な観点から ITER 計画への最終的な判断を下すよう求め、配慮すべき事項として、(1) 想定外の費用増大や進捗の遅れがないよう、綿密な計画管理と適切な評価 (2) 我が国の核融合研究全体と ITER 計画が有機的に連携する体制の構築 (3) トカマク以外のプラズマ閉じ込め方式の研究も推進を図る (4) 誘致の場合の安全性確保や放射化物処理などへの十分な対応 −といった点を挙げている。

今月には、尾身科技政策担当大臣が訪米して再度米国側と ITER 計画を話し合うほか、東京で第2回 ITER 政府間協議が開催される。欧州の出方など国際的な駆け引きもからんでくることなどから、12月25日の総合科学技術会議では最終的な判断を次回の本会議以降に持ち越すことで了承されたが、総合科技会議の中心メンバーである尾身大臣らが今回誘致に関する前向きな姿勢を表したことは、ITER 国内誘致の議論により明確な方向性を示したものと言える。


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